重要事項説明|宅建業者の調査義務

すでに解説しているとおり、宅建業者は重要事項説明の義務を負っているわけですが、そもそも対象の物件について十分な説明をするためには事前の調査が不可欠となります。

また、宅建業者には別途信義誠実義務というものが課されていて、不動産取引の専門家として宅建業者を信頼して取引に入った関係者に対して、一般に求められる以上の高度な注意義務が課されています。

宅建業法31条1項

宅地建物取引業者は、取引の関係者に対し、信義を旨とし、誠実にその業務を行なわなければならない。

例えば、不動産売買の媒介を依頼されたときには、売主の権利が完全なものかどうか、抵当権など制限物件がついていないか等について調査する義務があり、これを怠って媒介をすると信義誠実の義務を果たしていないと判断されてしまいます。

しかし、どの内容をどの程度調査すればよいのかという基準をしっかり見極めていないと、調査が不十分であったり、反対に時間と費用をかけすぎてしまい、結果として調査しすぎるということも起こりかねません。

そこで今回は、重要事項説明の調査義務について解説していきたいと思います。

法定重説事項の場合

宅建業法に定められている重要説明事項(法定重説事項)については、宅建業者は正確な情報を調査義務があるとされています。

法定重説事項以外の事項(相手方から質問・指示があった場合)

法定重説事項以外の事項について、取引の相手方から宅建業者に対して特に質問・指示があった場合には、宅建業者が知っている情報は告知すべきとされています。

もしも宅建業者が知らないものであっても、宅建業者の調査能力の範囲内であって媒介報酬等に照らして過大な費用負担もなく、あるいは別途費用を受領して調査できる事項については、調査する義務があるとされています。

例えば、土壌汚染の有無、程度について質問があった場合、売主や役所に問い合わせることは容易にできるので、それにより得られた情報の範囲内で説明する義務はあるとされています。

一方、ボーリング調査のような専門業者でなければできないような調査まで行う義務はありません。

法定重説事項以外の事項(相手方から質問・指示がない場合)

法定重説事項以外の事項について、取引の相手方から質問・指示がない場合においても、契約の締結の判断に重要な影響を及ぼす事項について、取引の相手方から宅建業者に対して特に質問・指示があった場合と同様の範囲内で調査すれば容易に知り得るときには調査義務があるとされています。

調査ができない場合

調査が困難であったり、専門性を要するため宅建業者として調査できない場合には、前述のとおり調査義務は課されないわけですが、相手方にその旨を説明すべきであると考えられています。

その他の場合

上記以外の場合は、宅建業者は鑑定人や評価人でないため、物件の物的状況について原則として調査・鑑定を行う義務はなく、現に知っている事項について説明義務を負います。

まとめ

調査義務についてあらためて表にまとめてみました。

調査義務の有無
法定重説事項 ・すべて調査義務あり
法定重説事項以外
(質問・指示あり)
・宅建業者が知っている事項、調査能力の範囲内で調査できる事項は義務あり
・専門業者でなければできない調査をする義務はなし
法定重説事項以外
(質問・指示なし)
・契約の締結の判断に重要な影響を及ぼす事項で、宅建業者の調査能力の範囲内で調査すれば容易に知り得るときは調査義務あり
調査できない場合 ・調査義務なし
(ただし、調査できない理由を説明しておくのがよい)
その他の場合 ・調査義務なし
(現に知っている事項のみ説明義務を負う)

調査義務がある場合は当然に義務を果たさなければなりませんが、義務がない場合においては、決して「調査をしてはいけない」と禁止しているわけではありません。

したがって、サービスの向上のために難しい調査にチャレンジしたり、他の業者よりも入念な調査を行うことをアピールしていただくなど、業務の質を上げていただくことはむしろ歓迎されるのではないでしょうか。

また、そもそも調査がいらなくなるように正確な知識を身につけていただくことも重要かと思います。