宅建業免許|知事免許と大臣免許は何が違うのか?

宅建業免許をとりたいと思っている方なら必ず検討することになるのが、知事免許をとるべきか、それとも大臣免許を取るべきかという問題です。

ひょっとしとしたら、「大臣免許の方が格上のような感じがするから大臣免許が欲しい!」と考えておられる方もいらっしゃるかもしれません。

残念ながら、どちらの免許をとるべきかは、あなたが主体的にできるものではなく、あなたの宅建業の営業形態によって自動的に決定されるものなのです。

では、どのような営業形態の場合に知事免許または大臣免許が必要となるのでしょうか?

今回は、知事免許と大臣免許の違いについて解説していきたいと思います。

宅建業法を確認しよう!

知事免許と大臣免許の別については、宅建業法にきちんと明記されています。まずは条文を確認してみましょう。

宅建業法3条 免許(抜粋)

宅地建物取引業を営もうとする者は、二以上の都道府県の区域内に事務所を設置してその事業を営もうとする場合にあつては国土交通大臣の、一の都道府県の区域内にのみ事務所を設置してその事業を営もうとする場合にあつては当該事務所の所在地を管轄する都道府県知事の免許を受けなければならない。

2つ以上の都道府県に事務所がある場合は大臣免許が必要!

2つ以上の都道府県にまたがって宅建業を営む事務所を設置する場合は、自動的に大臣免許を受けなければなりません。

つまり、次の要件にいずれも該当する場合は大臣免許を受ける必要があるということです。

大臣免許の要件
  • 2つ以上の宅建業の事務所がある。
  • 異なる都道府県に事務所がある。

例えば、愛知県に宅建業者の本店、岐阜県に支店を設置するような場合がこれに該当します。

1つまたは複数の事務所が同一の都道府県にある場合は知事免許が必要!

1つまたは複数の事務所を同一の都道府県に設置する場合は、その事務所の所在地がある都道府県知事の免許を受けなければなりません。

つまり、次の要件にいずれも該当する場合は知事免許を受ける必要があります。

知事免許の要件
  • 1つ以上の事務所がある。
  • 同一の都道府県にすべての事務所がある。

例えば、名古屋市に本店があり、岡崎市と豊橋市に支店がある場合は知事免許が必要ということになります。

事務所の増減があった場合は免許換えが必要かも!?

すでに宅建業免許を受けている者が、その営業の都合で事務所の増減があった場合において、知事免許および大臣免許の要件に合致しなくなった際には、知事免許→大臣免許または大臣免許→知事免許免許換えをしなければなりません。

知事免許→大臣免許へ免許換えの例

愛知県知事免許を受けている宅建業者が岐阜県に事務所を新設するような場合。

大臣免許→知事免許へ免許換えの例

愛知県に本店、岐阜県に支店を持つ大臣免許業者が岐阜県の支店を閉鎖し、結果として愛知県のみに事務所が存在することになる場合。

新規免許申請の手数料が違う!

知事免許と大臣免許では、新規免許申請時の手数料が大きく異なります。なお、更新申請の手数料についてはどちらも同じ金額となります。

区分 免許 費用
新規申請 知事免許 33,000円
大臣免許 (登録免許税)90,000円
更新申請 知事免許 33,000円
大臣免許

手数料の納め方

新規知事免許申請の場合、手数料は都道府県収入証紙を書類に貼り付けて納めるのに対し、新規大臣免許申請の場合は登録免許税という形になりますので、税務署に納めることになり、その領収書を窓口に提出します。

なお更新申請については、知事免許は同じく収入証紙で納め、大臣免許は収入印紙で納めることになりますのでご注意ください。

新規免許申請の審査期間が違う!

新規免許申請においては、知事免許と大臣免許ではその審査にかかる時間が次のとおり異なります。

新規免許申請 処理期間
知事免許 約40日
大臣免許 約90日

誤解していませんか?知事免許であっても全国で宅建業を営むことができます!

知事免許という名称からすると、まるで免許を受けていると都道府県内でしか宅建業を営業できないような感じがしますが、そんなことはなく、全国で宅建業を営むことができます。

例えば、名古屋市に事務所が1つあり、愛知県知事免許を受けている宅建業者は、東京でも宅建業を営業することができます。

営業場所の所在地を管轄する都道府県知事に指導監督される可能性がある!

都道府県知事は、大臣免許業者または知事免許業者のいずれに対しても、その都道府県内で営業活動をする宅建業者には指導監督ができることになっています。

宅建業法65条3項(抜粋)

都道府県知事は、国土交通大臣又は他の都道府県知事の免許を受けた宅地建物取引業者で当該都道府県の区域内において業務を行うものが、当該都道府県の区域内における業務に関し、この法律の規定に違反した場合においては、当該宅地建物取引業者に対して、必要な指示をすることができる。

例えば、愛知県知事免許を受けている宅建業者が東京で営業活動をしている場合において違反行為などがあった際、東京都知事から指導を受ける可能性があるということです。

なお、国土交通大臣はすべての宅建業者に対して指導・助言・勧告ができるものとされています。

宅建業法71条 指導等

国土交通大臣はすべての宅地建物取引業者に対して、都道府県知事は当該都道府県の区域内で宅地建物取引業を営む宅地建物取引業者に対して、宅地建物取引業の適正な運営を確保し、又は宅地建物取引業の健全な発達を図るため必要な指導、助言及び勧告をすることができる。

なんじゃそりゃ!手続きの窓口はほとんど同じ!?

ここまで散々、知事免許と大臣免許の違いを解説してきましたが、なんとその手続きを受け付けている窓口はほとんど同じになります。

どういうことかというと、宅建業法では、大臣免許関係の手続きであったとしても一部の手続きを除き、主たる事務所が所在する都道府県の知事免許関係の窓口を経由して行うと定められているのです。

宅建業法78条の3 申請書等の経由(要約)

1項 免許申請、各種変更及び廃業により国土交通大臣に提出すべき申請書その他の書類は、その主たる事務所の所在地を管轄する都道府県知事を経由しなければならない。
2項 業務行う場所の届出書は、その届出に係る業務を行う場所の所在地を管轄する都道府県知事を経由しなければならない。
※業務を行う場所の届出とは、案内所や展示会など事務所以外で一時的に営業を行う場合に必要となる手続きのことです。

大臣免許業者だからといって、各種の手続きの窓口がすべて国土交通省というわけではないので注意が必要です。

まとめ

いかがでしょうか?知事免許と大臣免許の違いがご理解いただけたでしょうか?

いずれにせよ、あなたの事業形態によってどちらの免許が必要で、費用がいくらかかり、どれだけの審査期間がかかるのかはおのずと決まってしまうことになります。

よって、いくつの事務所をどこに設置するのかが免許を受けるうえでとても重要になってくるというわけです。

まとめると、

<判断基準>
・2つ以上の都道府県に事務所がある → 大臣免許
・1つ以上の事務所が同一都道府県内にある → 知事免許

<新規免許申請の費用>
・大臣免許 → 90,000円(税務署に納める)
・知事免許 → 33,000円(収入証紙で納める)

<新規免許申請の審査期間>
・大臣免許 → 約90日
・知事免許 → 約40日

このようになります。

参考にしてみてください。