宅建業者は、取引の相手方(売主、貸主を除く)に対して、事前に一定の重要な事項について宅建士に説明させなければならないことになっています。
これを重要事項説明といいますが、この重要事項説明の内容には、宅建業法に定められた必ず説明しなければならない法定の説明事項があります。
宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面を交付して説明をさせなければならない。
ここでは、法定の説明事項のうちの「一棟の建物またはその敷地に関する権利およびこれらの管理・使用に関する事項」について詳しく解説していきます。
このページでは、宅建業者の重要事項説明のうち、特に宅建業法に明示されている16の項目(法定重説事項)をリストアップしています。 個別の項目に関する詳細については、順次、個別に解説記事をアップしていく予定です。 法定重説事 …
一棟の建物またはその敷地に関する権利およびこれらの管理・使用に関する事項(区分所有建物の場合)
一棟の建物またはその敷地に関する権利およびこれらの管理・使用に関する事項については、正式には宅業業法において次のように記されています。
当該建物が区分所有権の目的であるものであるときは、当該建物を所有するための一棟の建物の敷地に関する権利の種類及び内容、共用部分に関する規約の定めその他の一棟の建物又はその敷地に関する権利及びこれらの管理又は使用に関する事項で契約内容の別に応じて国土交通省令・内閣府令で定めるもの
昭和55年の宅建業法改正によって、説明すべき重要事項として新たに分譲マンションに代表される区分所有建物について、建物またはその敷地に関する権利およびこれらの管理または使用に関する事項が加えられました。
説明すべき内容(区分所有建物の売買・交換の場合)
説明すべき内容は次のとおりです。
- 敷地に関する権利の種類および内容について
- 共有部分に関する規則の定めについて
- 専有部分の利用制限に関する規約について
- 専用使用権について
- マンション管理規約に定められる金銭的な負担を特定の者にのみ減免する条項について
- 修繕積立金等について
- 管理費用について
- 管理が委託されている場合について
- マンション修繕の過去の実施状況について
それぞれ確認していきましょう。
1.敷地の権利の種類および内容について
敷地に関しては、総面積として実測面積、登記簿上の面積、建築確認の対象とされた面積を記載することとする。なお、やむを得ない理由によりこれらのうちいずれかが判明しない場合は、その旨を記載すれば足ります。
また、中古物件の代理、媒介の場合にあっては、実測面積、建築確認の対象とされた面積が特に判明している場合のほかは、登記簿上の面積を記載することをもって足りるとされています。
権利の種類に関しては、所有権、地上権、貸借権等に区分して記載することとされています。
権利の内容に関しては、所有権の場合は、対象面積を記載することをもって足りるものとするが、地上権、貸借権等の場合は対象面積およびその存続期間も併せて記載することとされています。
なお、地代、賃借料などについても記載を要するものとするが、これについては区分所有権の負担する額を記載することされています。
2.共有部分に関する規則の定めについて
共有部分というのは、マンション等の区分所有建物のうち独立した所有権の対象となる専有部分を除く部分(法定共有部分)および専有部分になり得る部分を規約によって共有部分としたもの(規約共有部分)のことで、原則として区分所有権者全員の共有とされています。
共有部分に関する規約の定めには、規約共有部分に関する規定の定めのほか、法定共有部分であっても規約で確認的に共有部分とする旨の定めがあるときはその定めについても説明しなければなりません。
なお共有部分に関する規約が長文にわたる場合においては、その要点を記載すれば足りるとされています。
また、この規約に関する調査としては、宅建業者は売主、管理組合および管理会社に対する調査を行う必要があると解されています。
規約の定めには規約案も含まれる!
新規分譲などの場合には、分譲業者が規約の案を作成し、買主の同意を得ることによって規約が成立するということが実務的に多いため、買主に対して提示される段階では規約の案であることが考慮されています。
3.専有部分の利用制限に関する規約について
これは、居住用に限り事業用としての利用の禁止のほか、フローリング工事、ペット飼育、ピアノ使用等の禁止または制限の規約上の定めが該当します。
なお、ここでいう規約には、共有部分の規約の定めと同様、新規分譲等の場合に買主に示されるものが規約の案であることを考慮して、その案も含むこととされているほか、規約の細則等で定められた場合においても規約の一部と認められるものを含めて説明事項となっています。
また、規約の定めが長文になる場合にいおいては、重要事項説明書にはその要点を記載すれば足りるものとされており、その際に要点の記載に代えて規約等の写しを添付することは差し支えないものの、相手方が理解しやすいように配慮することが必要です。
4.専用使用権について
専用使用権は、専用駐車場、専用庭やバルコニーなどのように、本来は共有であるものを特定の者に対してのみ排他的に使用させることを許す契約上の権利のことです。
専用使用権が設定されると、その部分の使用が妨げられるばかりでなく転売価格等にも影響を及ぼすので、従来から取引後においてその設定をめぐるトラブルが多発していたため、マンション敷地等に専用使用権が設定されているときにその内容を説明することとされています。
具体的に駐車場については、専用使用をなし得る者の範囲、専用使用料の有無、専用使用料を徴収している場合にはその帰属先を説明し、専用庭等についてはその項目および専用使用料を徴収している場合にはその帰属先について説明する必要があります。
5.マンション管理規約に定められる金銭的な負担を特定の者にのみ減免する条項について
これは、新築分譲マンションの場合は分譲開始時点で管理組合が実質的に機能していないため、宅建業者が規約の案を作成している場合が多く、一部の購入者にとっては不利な金銭的な負担が定められている規約が存在したため、これを解決するために定められたものです。
6.修繕積立金等について
いわゆる大規模修繕積立金、計画修繕積立金などに関する規約の定めのことであり、そのような制度がマンションの財産価値に大きな影響を与えることから説明事項とされているものです。
計画的な維持修繕とは、相当な期間をおいて行う維持修繕のことをいいますが、通常は2年~3年程度の期間で行われています。このような計画修繕積立金等の定めが規約にある場合には、宅建業者は管理会社等に対する調査を行い、その制度の内容を説明することになります。
また、計画修繕積立金の関して、滞納額があるときにはその額を告げる必要があり、すでに積み立てている額を説明する場合にはできる限り直近の数値を明示して説明しなければなりません。
7.管理費用について
通常の管理費用とは、共有部分の管理等に要する共益費等に充当するために、区分所有権者が月々負担する定期的な経費のことであり、修繕積立金等に充当される経費は含みません。
マンションの購入等をしようとする者にとっては、月々負担すべき管理費用の額がいくらであるかは重大な利害関係があるため説明事項となっています。
この管理費用の額は、時間の経過とともに変動するものと考えられるので、できるだけ直近の数値を明示して説明することとされています。また、管理費用について滞納があればその額についても説明する必要があります。
8.管理が委託されている場合について
これは、マンション等の区分所有建物において、その経済価値を適正に維持し、円滑な居住関係を確保していくためには日常の管理をいかなる者が行うのかが重要となるため説明事項とされています。
委託を受けている者が法人であるときは、その商号または名称、マンション管理業者登録番号および主たる事業所の所在地を説明することになります。
なお、管理の委託先のほか、管理委託契約の主たる内容も併せて説明することが望ましいとされています。
9.マンション修繕の過去の実施状況について
これは、消費者がマンションを安心して購入することができるようにするとともに、中古住宅市場の活性化の手段として義務付けられているものです。
説明すべき修繕は、共有部分の大規模修繕や計画修繕が想定されていますが、通常の維持修繕や専有部分の維持修繕を排除するものではありません。
専有部分に関する維持修繕の実施状況の記録が存在する場合には、売買等の対象となる専有部分に関する記録についてのみ説明すれば足りるとされています。
なお、管理組合、売主、マンション管理業者等に過去の記録を確認にのうえ存在しないことが分かった場合は、その照会をもって宅建業者としての調査義務を果たしたことになると考えられています。
区分所有建物の賃借の場合
ここまで、マンションなどの区分所有建物の売買・交換の場合についての説明事項を開設してきましたが、賃借の契約の場合はどうなるのでしょうか?
賃借の場合は、売買・交換の際に説明すべき事項のうち、賃借人が直接制限を受けるようなものに限って説明するべきとされています。
具体的には次の2つの事項です。
3.専有部分の利用制限に関する規約について
8.管理が委託されている場合について
数棟の建物の共有に属する土地について
1棟の建物が1団地内に存在して、その団地内の土地またはこれに関する権利が数棟の建物の所有者の共有になっている場合は、その共有に属する土地等についても区分所有者が共有持分を有するものであるので、必要に応じて共有の対象とされている土地の範囲、共有持分の割合およびその土地の用途などについても重要事項説明書に記載してその内容を説明することとされています。