宅建業者なら絶対に理解しておくべき「信義誠実義務」とは?

もしあなたが法律を学んだことがあったとしたら、信義誠実義務という言葉を知っているか、あるいは聞いたことがあるかもしれません。

「信義誠実義務」とは、民法の一番最初の条項に定められた私法秩序の大原則の一つとされているものです。

民法1条2項

権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。

これは信義則と表現されることもあり、「互いに相手方の信頼を裏切らないように、誠意をもって行動しなければならない。」という原則 のことです。

実は宅建業法の中にも、この信義誠実義務にあたる条文が含まれています。

ではなぜ民法に定められているものが宅建業法においても敢えて規定されているのか?

これは、それだけ宅建業者にとって重要事項だということです。つまり、宅建業者が絶対に理解しておかなければならないものと言えるでしょう。

そこで今回は、宅建業者の「信義誠実義務」について解説していきたいと思います。

宅建業者の信義誠実義務

宅建業者が取り扱う宅地や建物は、一般の方にとっては貴重な財産であり、またその取引とは各個人にとって一生に何度もない重要な事柄であるため、宅建業者には特に信義誠実に業務を処理することが強く求められています。

宅建業法31条1項

宅地建物取引業者は、取引の関係者に対し、信義を旨とし、誠実にその業務を行なわなければならない。

宅建業者に求められる高度な注意義務

前述のとおり、信義誠実とは互いに相手方の信頼を裏切らないように、誠意をもって行動することなのですが、宅建業者に求められるのはこれだけに留まりません。

宅建業者は、不動産取引の専門家として宅建業者を信頼して取引に入った関係者に対して、一般に求められる以上の高度な注意義務を負っています。

例えば、不動産売買の媒介を依頼されたときには、売主の権利が完全なものかどうか、抵当権など制限物件がついていないか等について調査する義務があり、これを怠って媒介をすると信義誠実の義務を果たしていないと判断されます。

宅建業者が負う注意義務の例

宅建業者は、取引の関係者が不測の損害を被ることがないように、次のような調査や説明をする義務を負います。

注意義務の例
  • 取引当事者の契約意思
  • 取引する物件の権利関係
  • 法規則
  • 周辺の環境や土地利用状況の見通し
  • 近隣住民の行動 など

信義誠実義務が求められる宅建業者の範囲

宅建業における信義誠実義務の主体は宅建業者となるのですが、これは代表者だけのことを意味しているのではありません。

次のような者が業務に関して行った行為は宅建業者の行為とみなされます。

宅建業者の範囲
  • 法人の代表者
  • 個人業者の代表者
  • 法人または個人業者の代理人
  • 使用人その他従業員

信義誠実義務に違反したらどうなる?

宅建業法の信義誠実義務は、宅建業者がいかなる心構えで業務を行わなければならないかということを規定した訓示的なものであって、たとえこれに違反したとしても、直接業務停止や免許取消しといった処分を受けることはありません。

しかし、取引の関係者に損害を与えたり、損害を与える恐れが大きい場合、不正または不当の度合いが著しい場合などは監督処分の対象になることがあります。

まとめ

いかがでしょうか?

たとえ信義誠実義務について知らなかったとしても、普段から依頼人のために一生懸命に働いていれば、信義誠実義務に反することはないと思われる方もしらっしゃるかもしれません。

しかしながら、宅建業者に求められる注意義務として、どのようなことを事前に調査すべきか、取引関係者に説明すべきかということは、業務に対する姿勢とか熱意でカバーできるものではありません。

これらを知識として知っていなくては、いくら一生懸命に業務を行っていても意図せず信義誠実義務に違反してしまう可能性もあるの
です。

ですから、宅建業者の方にはぜひ信義誠実義務についてしっかり理解していただきたいと思います。