重要事項説明の内容|建物状況調査の実施の有無およびその結果の概要(既存建物の売買or交換の場合)

宅建業者は、取引の相手方(売主、貸主を除く)に対して、事前に一定の重要な事項について宅建士に説明させなければならないことになっています。

これを重要事項説明といいますが、この重要事項説明の内容には、宅建業法に定められた必ず説明しなければならない法定の説明事項があります。

宅建業法35条1項(抜粋)

宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面を交付して説明をさせなければならない。

ここでは、法定の説明事項のうちの「建物状況調査の実施の有無およびその結果の概要」について詳しく解説していきます。

建物状況調査の実施の有無およびその結果の概要(既存建物の売買or交換の場合)

建物状況調査の実施の有無およびその結果の概要については、正式には宅業業法において次のように記されています。

宅建業法35条1項6号の2(イ)(抜粋)

当該建物が既存の建物であるときは、次に掲げる事項
(イ)建物状況調査(実施後国土交通省令で定める期間を経過していないものに限る。)を実施しているかどうか、及びこれを実施している場合におけるその結果の概要

建物状況調査のおさらい

建物状況調査とは、建築士で一定の専門的な知識を有する者が、建物の基礎、外壁等の部位ごとに生じている割れ、雨漏り等の劣化現象や不具合事象の状況を目視、計測等により調査することです。

平成28年の宅建業法改正で、既存住宅である場合には媒介契約の内容に建物状況調査(インスペクション)を実施する者のあっせんの有無を加えることになりました。

国土交通省令で定める期間

ここでいう国土交通省令で定める期間とは、基本的に1年となっていますが、鉄筋コンクリート造または鉄骨鉄筋コンクリート造の共同住宅等については2年となっています。

宅建業法施行規則16条の2の2(抜粋)

国土交通省令で定める期間は、1年(鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造の共同住宅等にあっては、2年)とする。

重要事項説明の対象となる建物状況調査

前述のとおり、調査の実施後1年(建物によっては2年)経過しているかどうかによって説明の要否が分かれることになるわけですが、説明が必要となる場合は具体的にどのような説明をすればよいのでしょうか?

過去1年以内に実施されている場合

建物状況調査が過去1年(または2年)以内に実施されている場合には、建物状況調査を実施した者が作成した「建物状況調査の結果の概要(重要事項説明用)」に基づき、劣化事象等の有無を説明することになっています。

説明を行うにあたっては、建物状況調査を実施した者が既存建物状況調査技術者であることを既存建物状況調査技術者講習実施機関のホームページなどで確認したうえで行うよう留意する必要があります。

調査の有無が分からない場合はどうなる?

売主などに建物状況調査の実施の有無を確認し、必要に応じて管理組合や管理業者にも問い合わせたうえ実施の有無が判明しない場合は、その照会をもって調査義務を果たしたことになります。

建物状況調査の結果の概要(重要事項説明用)の様式(木造・鉄骨造)
サンプル

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このほか鉄筋コンクリート・鉄骨鉄筋コンクリート造用のものもあります。

実施後1年を経過していない建物状況調査が複数ある場合

実施後1年を経過していない建物状況調査が複数ある場合は、直近に実施されたものが重要事項説明の対象となります。

ただし、直近に実施されたもの以外の建物状況調査により劣化事象が確認されている場合には、消費者の利益を考慮して直近でない調査結果についても買主等に説明することが適当であるとされています。

建物状状況調査の説明が不十分だと法律違反になってしまうことも!?

取引の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる建物状況調査を直近のもの以外に別途認識しているにもかかわらず、その建物状況調査について説明しない場合は、故意に事実を告げず、または不実のことを告げる行為として宅建業法違反となる恐れがあるので注意が必要です。

宅建業法47条1項(抜粋)

宅地建物取引業者は、その業務に関して、宅地建物取引業者の相手方等に対し、次に掲げる行為をしてはならない。
1.  宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の契約の締結について勧誘をするに際し、又はその契約の申込みの撤回若しくは解除若しくは宅地建物取引業に関する取引により生じた債権の行使を妨げるため、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為

実施後1年を経過する前に耐規模な自然災害が発生した場合

建物状況調査を実施してから1年を経過する前に大規模な自然災害が発生した場合など、重要事項の説明時の建物の状況が建物状況調査を実施した時と異なる可能性がある場合であっても、自然災害による建物の影響の有無およびその程度について具体的に判断することは困難であることや、自然災害が発生する以前の建物状況調査おいて劣化事象等が確認されていた場合においては、その調査結果が取引の判断の参考になると考えられるため、自然災害発生前の調査についても重要事項として説明することが適当であるとされています。