重要事項説明|違反した場合の責任と罰則

重要事項説明は宅建業者において最も大事な業務の一つであることは、このサイトをご覧になっている方ならすでに理解していただいていると思います。

同時に、重要事項説明に関するルールに違反してしまった場合の宅建業者の責任はとても重いものとなっているため、宅建業者や宅建士の方には十分に注意していただく必要があります。

そこで今回は、重要事項説明を義務に違反していまった場合の責任と罰則を、民事上の責任宅建業法上の責任に分けて解説していきます。

民事上の責任

宅建業者が依頼人または取引相手に対して負う調査義務、説明義務は法定重説事項に限られるものではありません。

もしも宅建業者の調査義務、説明義務の範囲内の事項であって、依頼人または取引の相手方の契約意思形成に重要な影響を及ぼす事項を故意または過失により説明しなかった場合は、宅建業者は説明義務違反による債務不履行または不法行為を理由とする損害賠償義務を負うことがあります。

民法415条(抜粋)

債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。

民法709条(抜粋)

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

さらに、宅建業者の調査義務、説明義務違反により取引の相手方が売買、交換または賃借の目的を達成することができなくなったときは、取引の相手方は債務不履行を理由とする契約の解除をすることができ、場合によっては詐欺による契約の取消し、または錯誤による契約の取消しの取消し・無効、あるいは消費者契約法による契約の取消しの対象となります。

民法541条・542条(抜粋)
  • 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。(541条)
  • 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。(542条)
民法95条・96条
  • 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。(95条)
  • 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。(96条)
消費者契約法4条

消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。

また、売主業者の場合は種類・品質に関する契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)を負う場合もあります。

民法562条・563条・564条(抜粋)
  • 引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。(562条)
  • 買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。(563条)
  • 前二条の規定は、損害賠償の請求並びに解除権の行使を妨げない。(564条)

宅建業法上の責任

宅建業者が過失により重要事項説明を怠った場合は、指示処分または業務停止処分(1年以内)、情状が特に重いときには免許取消処分を受けることがあります。

また、法定重説事項またはそれ以外の事項で、依頼人または取引の相手方の契約意思形成に重要な影響を及ぼす事項について、宅建業者が故意に事実を告げず、または事実でないことを告げた場合には業務停止処分(1年以内)の対象となり、特に情状が重いときには免許取消処分の対象となるほか、2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはこれが併せて科されることもあります。

まとめ

<民事情の責任>
・債務不履行を理由とする損害賠償義務
・不法行為を理由とする損害賠償義務
・債務不履行を理由とする契約の解除
・詐欺による契約の取消し
・錯誤による契約の取消しの取消し・無効
・消費者契約法による契約の取消し
・種類・品質に関する契約不適合責任

<宅建業法上の責任>
・指示処分
・業務停止処分(1年以内)
・免許取消処分
・2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金

なお、過去の判例には、宅建士ではない従業員が作成して説明した重要事項説明書により買主に損害を与えた事案において、宅建業者に損害賠償責任が認められたケースがあるようです。

もちろん、民事上の責任と宅建業法上の責任は同時に問われる可能性があるということも忘れないでください。