以前このサイトでは、宅地建物取引士(宅建士)がどのような経緯ではじまったのかという宅建士の沿革について解説しました。
宅建業をはじめたい方や不動産業者に就職したいという方にとって、宅地建物取引士(宅建士)の資格は当たり前のような存在だと思われているのではないでしょうか。 では、あなたはこの宅建士制度がどのような経緯でスタートしたのかをご …
この沿革から宅建士の存在意義を考察すると、「業界から悪徳業者を排除し、不動産取引のプロフェッショナルとして公正な不動産取引を実現する。」といったところでしょうか。
全ての国民が不動産取引に詳しいわけではありません。むしろそんな方は稀でしょう。つまり宅建士とは、私たち国民が安心して不動産取引をするために必要とされる存在なのです。
そんな宅建士の役割について、宅建業法でわざわざ明記されている3つ条文があるのをあなたはご存じでしたか?
今回は宅建士の求められる3つのポイントについてご紹介します。
これが宅建士に求められる3つのポイント!
宅建業法では、宅建士に関する次の3つのポイントが明記されています。
- 業務処理の原則
- 信用失墜行為の禁止
- 知識及び能力の維持向上
それぞれ詳しく解説していきます。
1.業務処理の原則
宅建業法では、宅建士の役割の1つとして業務処理原則が定められており、公正・誠実に事務を実施する義務と関連する業務の従事者と連携する努力義務が規定されています。
宅地建物取引士は、宅地建物取引業の業務に従事するときは、宅地又は建物の取引の専門家として、購入者等の利益の保護及び円滑な宅地又は建物の流通に資するよう、公正かつ誠実にこの法律に定める事務を行うとともに、宅地建物取引業に関連する業務に従事する者との連携に努めなければならない。
公正誠実義務と関連業者との連携する努力義務
「公正・誠実に事務を実施する義務」は、公正誠実義務と言われ公認会計士などの専門性の高い職業に課されている義務です。
宅建士の公正誠実義務と関連業者との連携する努力義務については、国土交通省が次のように具体的に示しています。
宅地建物取引士は、宅地建物取引の専門家として、専門的知識をもって適切な助言や重要事項の説明等を行い、消費者が安心して取引を行うことができる環境を整備することが必要である。このため、宅地建物取引士は、常に公正な立場を保持して、業務に誠実に従事することで、紛争等を防止するとともに、宅地建物取引士が中心となって、リフォーム会社、瑕疵保険会社、金融機関等の宅地建物取引業に関連する業務に従事する者との連携を図り、宅地及び建物の円滑な取引の遂行を図る必要があるものとする。
2.信用失墜行為の禁止
宅建業法において、宅建士は信用失墜行為が禁止されています。
宅地建物取引士は、宅地建物取引士の信用又は品位を害するような行為をしてはならない。
信用失墜行為とは、いわゆる職業倫理に反する行為のことで、宅建士の職責に反する行為だけではなく、職務に直接関係しない行為や私的な行為も含まれると解釈されています。
また、信用失墜行為の禁止は専門家に求められる当然の義務とされています。
国土交通省では次のように具体的に示されています。
宅地建物取引士は、宅地建物取引の専門家として専門的知識をもって重要事項の説明等を行う責務を負っており、その業務が取引の相手方だけでなく社会からも信頼されていることから、宅地建物取引士の信用を傷つけるような行為をしてはならないものとする。宅地建物取引士の信用を傷つけるような行為とは、宅地建物取引士の職責に反し、または職責の遂行に著しく悪影響を及ぼすような行為で、宅地建物取引士としての職業倫理に反するような行為であり、職務として行われるものに限らず、職務に必ずしも直接関係しない行為や私的な行為も含まれる。
3.知識及び能力の維持向上
宅建士が事務を適正に行うためには、常に最新の法令や個別物件に関する情報を把握することや、知識および能力を維持向上することが重要であることから規定されています。
宅地建物取引士は、宅地又は建物の取引に係る事務に必要な知識及び能力の維持向上に努めなければならない。
国土交通省では次のように示されています。
宅地建物取引士は、宅地建物取引の専門家として、常に最新の法令等を的確に把握し、これに合わせて必要な実務能力を磨くとともに、知識を更新するよう努めるものとする。
例えば、宅建士の主要な職務である重要事項説明は、これまでの法改正によってその説明項目が急激に増加してきました。宅建士はこのように複雑化・高度化する業務内容に常に対応していかなければなりません。
違反した場合はどうなる?
宅建士に求められる3つのポイントに違反したり、怠ってしまったらどうなってしまうのでしょうか?罰則はあるんでしょうか?
実は特に指導、処分、罰則といったものは定められていません。しかしながら、これら義務や禁止事項を守らないことによって具体的なトラブルを生じてしまった場合、内容によっては処分等の対象と可能性があります。
罰則がないからといって守らなくてよいというわけでは決してありません。むしろ宅建士の鑑となるよう率先して実践していただきたいと思います。
まとめ
いかがでしょうか?
まとめると宅建業法が宅建士に求める3つのポイントは、
1.業務処理の原則
2.信用失墜行為の禁止
3.知識及び能力の維持向上
この3つです。
このうち、業務処理の原則は、公正誠実義務と関連業者と連携する努力義務から成り立っています。
特にこれから宅建士を目指す方には、試験対策としてではなくしっかり記憶しておいていただきたいと思います。