宅建業法における媒介契約の規制内容を理解しておこう!

代理が民法に定められているのに対し、媒介は民法に定められておらず、宅建業法においてその規制が行われています。

媒介は宅建業界において最も多く採用されている取引形態であるため、もしあなたが宅建業者であるならば、必ず理解しておかなければなりません。

そこで今回は宅建業法における媒介契約の規制内容について解説していきたいと思います。

宅建業法の媒介契約の規制

宅建業法に定められている媒介契約の規制は主に次の2つの事項になります。

主な媒介契約に関する規制内容
  • 書面作成義務
  • 業務処理状況報告義務

それぞれ確認していきましょう。

書面作成義務

宅建業者は、宅地建物の売買または交換に関する媒介契約を締結したときは、契約内容に関する一定の事項を記載した書面を作成して、依頼人に交付しなければなりません。

宅建業法34条の2(抜粋)

宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換の媒介の契約を締結したときは、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を作成して記名押印し、依頼者にこれを交付しなければならない。

契約内容の書面化によって、媒介の依頼をする意思の存在がはっきりするとともに契約内容も明確化されることになります。

ここで書面化しなければならないのは、契約内容そのものではなく、媒介契約を締結した場合におけるその契約の内容になります。

しかし、実際は契約内容そのものを書面で行うことが多いと考えられており、その場合に必要とされる事項がもれなく記載されていれば、その契約書をもってここでいう書面にかえることができると考えられています。

書面に記載すべき契約内容

書面に記載しなければならない事項は、後になってトラブルが発生しないようにするために契約内容の明確化が必要とされる事項で、次のとおりになります。

書面に記載すべき内容
  1. 宅地または建物を特性するために必要な表示
  2. 宅地または建物を売買すべき価格またはその評価額
  3. 媒介契約の類型
  4. 建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項
  5. 媒介契約の有効期間および解除に関する事項
  6. 指定流通機構への物件登録に関する事項
  7. 報酬に関する事項
  8. 専任媒介契約において、依頼人が他の宅建業者の媒介または代理によって売買または交換の契約を成立させたときの措置
  9. 専属専任媒介契約において、依頼人が売買または交換の媒介を依頼した宅建業者が探索した相手方以外の者と売買または交換の契約を締結したときの措置
  10. 明示型の一般媒介契約において、依頼人が明示していない他の宅建業者の媒介または代理によって売買または交換の契約を成立させたときの措置
  11. その媒介契約が国土交通大臣が定める標準媒介契約約款の基づくものであるか否かの別

それぞれ詳しくみていきましょう。

1.宅地または建物を特性するために必要な表示

これは媒介に関する売買等の対象となる物件を明確に把握しておくためのものです。

通常、宅地については所在と地番、建物は所在や種類、構造で特定することができますが、一筆の土地の一部やマンションの一室の売買の媒介の場合には、図面の添付や部屋番号などによって特定しなければなりません。

また、依頼人が希望する物件が具体的に決まっていない場合は、物件の種類、価格、広さ、間取り、所在地、その他の希望条件を記載すれば足ります。

2.宅地または建物を売買すべき価格またはその評価額

物件の売買すべき価格(売買の媒介の場合)または物件の評価額(交換の媒介の場合)を決定するうえで宅建業者の査定価格が大きな影響力を与えるため、これらの価格について宅建業者が意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければなりません。

宅建業法34条の2 2項(抜粋)

宅地建物取引業者は、価額又は評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならない。

根拠としては、査定した価格について合理的な説明がつくものでなければならず、そのための手法としては、公益財団不動産流通推進センターが作成した価格査定マニュアルを用いるほか、同様の取引事例を用いる方法があります。

同様の取引事例を収集する際には、宅建業者の秘密保持義務に抵触しないように注意する必要があります。

3.媒介契約の類型

媒介契約は、専任媒介契約、専属専任媒介契約、一般媒介契約の3タイプがあります。このうち一般媒介契約は、他の業者に重ねて依頼した場合にはその業者を明示する義務あるものと、明示義務する義務がないものに区別されます。

書面には、このタイプのいずれかであるか(明示義務があるかどうかも含む)を明示しなければなりません。

4.建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項

平成28年の法改正で、既存住宅である場合には媒介契約の内容に建物状況調査(インスペクション)を実施する者のあっせんの有無を加えることになりました。

なお、依頼人が調査を実施する場合には、事前に物件所有者の同意が必要であることや、報酬とは別にあっせんに関する料金を受領できないことに注意が必要です。

建物状況調査(インスペクション)

建築士で一定の専門的な知識を有する者が、建物の基礎、外壁等の部位ごとに生じている割れ、雨漏り等の劣化現象や不具合事象の状況を目視、計測等により調査すること。

5.媒介契約の有効期間および解除に関する事項

専任媒介契約、専属専任媒介契約の有効期間は3か月を超えることができません。もし3か月を超える特約をしたときは、有効期間は3か月に短縮されます。

宅建業法34条の2 3項

依頼者が他の宅地建物取引業者に重ねて売買又は交換の媒介又は代理を依頼することを禁ずる媒介契約(以下「専任媒介契約」という。)の有効期間は、3月を超えることができない。これより長い期間を定めたときは、その期間は、3月とする。

更新は、専任媒介契約および専属専任媒介契約の有効期間であれば依頼人の申出により何度でもすることができます。ただし、依頼人からの申出がその都度必要となり、いわゆる自動更新の特約は無効となりまでご注意ください。

宅建業法34条の2 4項(抜粋)

有効期間は、依頼者の申出により、更新することができる。ただし、更新の時から3月を超えることができない。

なお、一般媒介契約は有効期間と更新に関する制限はありません。

6.指定流通機構への物件登録に関する事項

専任専属媒介契約および専属専任媒介契約を締結したときは、宅建業者は媒介の依頼を受けた物件に関する所定の事項を指定流通機関(レインズ)に登録しなければなりません。

宅建業法34条の2 5項

宅地建物取引業者は、専任媒介契約を締結したときは、契約の相手方を探索するため、国土交通省令で定める期間内に、当該専任媒介契約の目的物である宅地又は建物につき、所在、規模、形質、売買すべき価額その他国土交通省令で定める事項を、国土交通省令で定めるところにより、国土交通大臣が指定する者(以下「指定流通機構」という。)に登録しなければならない。

この登録に関する事項は、依頼人へ交付すべき書面に記載しなければなりません。

なお、専任専属媒介契約および専属専任媒介契約を締結し、指定流通機構に登録した場合は、発行される登録を証する書面を遅滞なく依頼人に引き渡さなければなりません。

宅建業法34条の2 6項(抜粋)

登録をした宅地建物取引業者は、登録を証する書面を遅滞なく依頼者に引き渡さなければならない。

また、登録した物件が成約に至ったときは、遅滞なくそ旨を指定流通機関に通知することが義務付けられています。

宅建業法34条の2 7項(抜粋)

宅地建物取引業者は、登録に係る宅地又は建物の売買又は交換の契約が成立したときは、遅滞なく、その旨を当該登録に係る指定流通機構に通知しなければならない。

指定流通機構

国土交通大臣が指定した不動産流通機構(通称「レインズ」)で、地域の不動産情報の交換業務等を行っている。現在、全国に4法人(東日本、中部圏、 近畿圏、西日本)が設立されており、毎年 10万件以上の売買が成立している。

ちなみにレインズは一般の方はアクセスすることができません。

7.報酬に関する事項

報酬額の記載にあたっては、報酬につき課されるべき消費税および地方消費税に関する事項についても記載しなければなりません。

8.専任媒介契約において、依頼人が他の宅建業者の媒介または代理によって売買または交換の契約を成立させたときの措置

すで解説しているとおり、専任媒介契約の依頼をした者は、他の業者に重ねて媒介等の依頼をすることができないのですが、この専任義務を担保するため、もし仮に依頼人が契約を破って成約に至ったときは違約金を支払うなどの取り決めをするのが通常です。

このような取り決めについて依頼人側に注意喚起をし、依頼人が思わぬ損害を被らないようにするために、書面に依頼人が専任義務に違反して成約に至ったときの措置について記載しなければならないことになっています。

なお、専属専任媒介契約についても同様の記載が必要になります。

9.専属専任媒介契約において、依頼人が売買または交換の媒介を依頼した宅建業者が探索した相手方以外の者と売買または交換の契約を締結したときの措置

専属専任媒介契約では、他の業者に重ねて媒介等の契約をすることが禁じられるのに加えて、自己で契約相手を見つけることも禁止されます。

にもかかわらず、依頼した業者を介さずに売買契約等の契約を締結した場合にどのような措置をとるのかについて書面に記載しなければなりません。

10.明示型の一般媒介契約において、依頼人が明示していない他の宅建業者の媒介または代理によって売買または交換の契約を成立させたときの措置

他の業者に重ねて媒介等の契約をすることが可能な一般媒介契約において、どの業者に重ねて依頼をしたかについて明示する義務があるタイプの場合、依頼人が明示義務に違反して成約したときの措置について書面に記載する必要があります。

11.その媒介契約が国土交通大臣が定める標準媒介契約約款の基づくものであるか否かの別

媒介契約を締結した際に交付しなければならない書面として、国土交通省の告示において標準媒介契約約款が定められていて、通常の媒介契約のおいてはこれを用いるように指導がなされています。

しかし、一般の依頼人が個々の業者の示す書面が標準媒介契約約款を用いたものかどうかを確認することは困難であるため、一目で標準媒介契約約款に基づくものであるかどうかを確認できるような記載をするように義務付けられています。

表示方法は、契約書の右上に次のような表示をする形となっています。

標準媒介契約約款の表示
  • 「この媒介契約は、国土交通大臣が定めた標準媒介契約約款に基づく契約です。」
  • 「この媒介契約は、国土交通大臣が定めた標準媒介契約約款に基づく契約ではありません。」

標準媒介契約約款には、標準専任媒介契約約款、標準専属専任媒介契約約款、標準一般媒介契約約款(依頼者が他に依頼する業者の明示義務を負うもの)の3種類が制定されています。

業務処理状況報告義務

媒介契約を締結した宅建業者は、媒介契約の対象である宅地建物の売買等の申込みを受けたときは、遅滞なくその旨を依頼人に報告しなければなりません。

宅建業法34条の2 8項

媒介契約を締結した宅地建物取引業者は、当該媒介契約の目的物である宅地又は建物の売買又は交換の申込みがあったときは、遅滞なく、その旨を依頼者に報告しなければならない。

加えて、専任媒介契約を締結した宅建業者は2週間に1回以上、専属専任媒介契約を締結した業者は1週間に1回以上、業務の処理状況を依頼者に報告しなければなりません。

宅建業法34条の2 9項(抜粋)

専任媒介契約を締結した宅地建物取引業者は、依頼者に対し、当該専任媒介契約に係る業務の処理状況を2週間に1回以上(依頼者が当該宅地建物取引業者が探索した相手方以外の者と売買又は交換の契約を締結することができない旨の特約を含む専任媒介契約にあつては、1週間に1回以上)報告しなければならない。

これに違反する特約は無効となりますのでご注意ください。

なお、この報告についての規定は存在していないのですが、標準専任媒介契約約款および標準専属専任媒介契約約款においては、明確に処理状況を報告するために文章による報告を行うこととされています。

代理契約にも準用されることを覚えておこう!

ここまで媒介契約の規制ということで解説していきますが、この媒介契約に関する規制は代理契約にも同様に適用されるということを覚えておいてください。

罰則について

媒介契約または代理契約に関する規定に違反した場合は、指示処分業務停止処分、情状が重いときには免許の取消処分を受けることがあります。

まとめ

いかがでしょうか?かなりのボリュームとなってしまったので、何度か読み直していただくことをおすすめいたします。

あらためて媒介契約のタイプと契約者の義務について表にまとめてみました。

専任 専属専任 一般
明示義務あり 明示義務なし
依頼の重複
(媒介・代理)
× ×
(明示義務あり)

(明示義務なし)
自己発見 ×
レインズへの
登録

(契約日から7日以内)

(契約日から5日以内)
任意 任意
業務処理
状況報告

(2週間に1回以上)

(1週間に1回以上)

(依頼人の請求があるとき、口頭OK)

(依頼人の請求があるとき、口頭OK)