平成27年の宅建業法改正によって、「宅地建物取引主任者」の名称が変更され、現行の「宅地建物取引士」となりました。
これと同じタイミングで、宅建業者に「従業者の教育」という努力義務が追加されていたのをあなたはご存じでしたか?
今回は、平成27年から追加された努力義務「従業員の教育」について解説していきたいと思います。
そもそも努力義務とは?
そもそもあなたは努力義務をきちんと理解しているでしょうか?
努力義務とは、罰則や強制力などを伴わない、当事者の努力を促すために定められる作為義務(やらなければならないこと)・不作意義務(やってはいけないこと)のことをいいます。
平たく言うと、「強制ではないが、当然するべきこと(するべきでないこと)。」といったところでしょうか。
例えば最近ですと、令和5年4月1日から自転車に乗る際にヘルメットの着用が努力義務となりました。巷ではヘルメットを被っている人が多くなった印象がありますが、罰則がないため被っていない人も依然としてたくさんいるようです。
従業員の教育
宅建業者が信義誠実義務を果たすなど、業務を適正に行うためには、宅建業者の代表者だけでなくすべての従業者が一定の素質を確保している必要があります。
このため宅建業法の改正によって、宅建業者に対して、宅建士に限らず広く宅建業の従業者に必要な教育を行う努力義務を規定し、宅建業の従業者の資質の確保を図ることになったわけです。
もしあなたが法律を学んだことがあったとしたら、信義誠実義務という言葉を知っているか、あるいは聞いたことがあるかもしれません。 「信義誠実義務」とは、民法の一番最初の条項に定められた私法秩序の大原則の一つとされているもので …
宅地建物取引業者は、その従業者に対し、その業務を適正に実施させるため、必要な教育を行うよう努めなければならない。
さらに国土交通省が従業者の教育について次ように解説しています。
宅地建物取引業者は、その従業者に対し、登録講習をはじめ各種研修等に参加させ、又は研修等の開催により、必要な教育を行うよう努めるものとする。
宅建士には別途ルールが存在している!?
宅建業法では、宅建士について業務処理原則・信用失墜行為の禁止・知識及び能力の維持向上といった規定が別途定められているのですが、従業者の教育に関する語力義務は従業者たる宅建士に事務を適正に行わせるための教育も含まれると解されています。
以前このサイトでは、宅地建物取引士(宅建士)がどのような経緯ではじまったのかという宅建士の沿革について解説しました。 この沿革から宅建士の存在意義を考察すると、「業界から悪徳業者を排除し、不動産取引のプロフェッショナルと …
まとめ
いかがでししょうか?
努力義務ということでペナルティがないため、スルーされていまいがちな部分かもしれませんが、宅建業者は従業員全体の資質についても責任を負っているということを覚えておいてください。
ちなみに、従業者の教育として具体的にどのような研修等をどれだけ受講するべきかという規定は存在していません。それぞれの業者が、足りない部分を補うとか、業績をさらに伸ばすといった目的を独自で判断し、必要に応じて業界団体などが主催する研修などを受けていただくことになります。