宅建業法でいう「宅地」とは何を意味するのか?言葉の定義を行政書士が解説!

ご存じだとは思いますが、宅建業とは略語で正式名称は「宅地建物取引業」といいます。ついでにご説明しておきますと、宅建業法は「宅地建物取引業法」の略で、取引士とは「宅地建物取引士」の略になります。

宅地建物取引業を言葉とおりに受け止めると、「宅地と建物を取引する仕事」と読むことができるのですが、宅建業者は建物が建っていない雑種地や農地など宅地とは言えない土地についても取引をすることがあります。

それって違法行為!?

そうではありません。実は、宅建業法のいう「宅地」には建物が建っている土地だけに限らず、その他の土地も含まれているからです。

今回は、宅建業法でいう「宅地」が何を意味するのか、どこまでの土地が「宅地」に含まれるのかについて解説していきたいと思います。

ちなみに、宅建業法でいう「宅地」とは、宅建業法が適用される土地と認識していただいて問題ありません。

宅建業法の「宅地」の定義

宅建業法には「宅地」の定義がきちんと明記されています。まずは条文を確認しましょう。

宅建業法2条1項 用語の定義(抜粋)

宅地 建物の敷地に供せられる土地をいい、都市計画法第8条第1項第1号の用途地域内のその他の土地で、道路、公園、河川その他政令で定める公共の用に供する施設の用に供せられているもの以外のものを含むものとする。

言い換えると宅建業法でいう「宅地」とは、

建物の敷地に供せられる土地+(用途地域内の土地-道路、公園、河川、政令で定める公共施設の用に供せられている土地)と解釈することができます。

まだまだ難しいのでもっと詳しくみていきましょう。

用地地域

用途地域とは、都市計画法で定められている地域のことで、土地利用の目的に応じて建築できる建物の種類等を規制するもので13種類に分類されています。

都市計画法8条1項1号が定める用途地域

・第一種低層住居専用地域 ・第二種低層住居専用地域 ・第一種中高層住居専用地域
・第二種中高層住居専用地域 ・第一種住居地域 ・第二種住居地域 ・準住居地域 ・田園住居地域
・近隣商業地域 ・商業地域 ・準工業地域 ・工業地域・工業専用地域

おそらく皆さんがお住いの地域も上記のどれかに該当していると思います。

用途地域は市町村が作成している都市計画図で確認できる!

余談になりますが、用途地域は皆さんがお住いの自治体が作成している都市計画図で確認することができます。

<参考例>名古屋駅周辺の用地地域


都市計画図は、多くの自治体ではインターネットで閲覧することができます。

名古屋駅周辺は商業区域(赤)で、駅の西側の少し離れたところは第1種低層住居専用地域(黄色)が分布していることが分かります。

建物の敷地に供せられる土地

建物の敷地に供せられる土地とは、実際に建物が建っているかどうか、過去に建物が建っていたかどうかは関係がなく、建物の敷地に利用する目的で取引の対象とされた土地のことをいいます。

また、登記上や固定資産税の課税地目が宅地になっているものだけではなく、農地や山林も含まれると解釈されています。

なお、建物の敷地に供せられる土地であれば、用途地域に該当してるかどうかは関係がありません。つまり、用途地域外であっても「建物の敷地に供せられる土地」であれば宅建業法でいう「宅地」に該当することになります。

このとき、「建物の敷地に供せられる土地」かどうかどのように判断するかというと、取引当事者が宅地として利用する予定かどうかだけではなく、その土地の現状が山林や原野であっても、宅地としての区画の有無、電気、ガス、上下水道の施設の有無、価格などから総合的に判断するものとされています。

政令で定める公共の用に供する施設

政令で定める公共の用に供する施設とは、広場水路のことです。

宅地建物取引業法施行令1条 公共施設(抜粋)

宅地建物取引業法第2条第1号の政令で定める公共の用に供する施設は、広場及び水路とする。

つまり宅建業法でいう「宅地」はこういうこと!

いろいろと読み解いてきましたが、文言が難しいので、「結局のところどういうこと?」と思われているかもしれません。

まとめると、次のような土地が宅建業法でいう「宅地」に該当します。

これが宅建業法でいう「宅地」だ!

・用途地域内で建物の敷地に供せられる土地
・用途地域外で建物の敷地に供せられる土地
・用地地域内の土地で道路、公園、河川、広場、水路以外の土地

基本的に用途地域は、街の中でも人が多く住んでいるところや、繁華街、工場が集まっている地域が該当することが多いため、用途地域内の土地はほぼすべて宅建業法でいう「宅地」に含まれると理解することができます。

市街化調整区域の農地を駐車場として利用するために取引する場合はどうなる?

みなさんは、市街化区域市街化調整区域という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

宅建業者の方にとっては愚問かもしれませんが、簡単にざっくりに説明すると、行政による地域の区分けのことで、市街化区域とは開発を推進する区域で、市街化調整区域は反対に開発を抑える区域のことです。

このうち、市街化調整区域は前述の用途地域に該当しません(市街化区域は該当します)。さらに、利用目的が駐車場ですし、農地ですからガスや水道設備などもありません。つまり、用途地域外の土地で建物の敷地に供せられる土地ではないと判断することができ、宅建業法でいう「宅地」には当てはまらないと判断することができます。

したがって、市街化調整区域の農地を駐車場に利用するための取引については、宅建業法は適用されないと捉えることができるわけですが、この事案について、公益財団法人不動産流通促進センターは次のような見解を示しています。

公益財団法人不動産流通促進センターの見解(売買事例 1306-B-0167)

市街化調整区域内で用途地域が指定されていない土地の場合には、買主が、みずからその土地を同じ用途(駐車場等)に使う目的で購入するのであれば、原則として宅建業法の適用はないが、市街化区域内の土地の場合には、原則として適用があるという違いがある。
ただ、市街化調整区域内の土地の場合でも、その買主が、宅建業者であったり、周辺地域の居住者あるいは農林漁業関係者などであったような場合には、将来その土地を開発するということも考えられるので、そのような場合には、後日のトラブル防止のためにも、宅建業法の適用があるものとして対応した方が無難である。

「宅建業法の定めに従えば、原則として宅建業法の適用はないが、買主によっては適用しておいた方が無難」といったところでしょうか。

この点について、この記事の作成時において参考となる判例は見つかりませんでした。

ところで「建物」の定義は?

ここまで長々と宅地についての定義を解説してきましたが、ここからは建物の定義について考えていきましょう。

というのはフェイントで、実は宅地建物取引業法と称していながら法律の中で「建物」の定義は定められていません。ですので、一般的に住宅や事務所、店舗、工場、倉庫など、柱・壁・屋根のある建築物のことと認識されています。

なお、「建物」には建物の一部が含まれるとされていて、マンションやアパートの一室、住居の一室は独立した取引行為の対象となる場合が多いため、宅建業法が適用されると考えられています。

まとめ

いかかでしょうか?

情報が多くて混乱してしまった方もいらっしゃるかもしれませんが、宅建業法でいう「宅地」は次の3つと覚えておいていただけば問題ありません。

・用途地域内で建物の敷地に供せられる土地
・用途地域外で建物の敷地に供せられる土地
・用地地域内の土地で道路、公園、河川、広場、水路以外の土地

この3つです。

もしも判断が難しいとか、考えるのが嫌だという場合は、大は小を兼ねるということで、とにかく全ての取引について宅建業法を適用していただけば、宅建業法の「宅地」に該当するかどうかという論争は避けることができるのではないかと思います。

参考にしてみてください。