絶対にやってはいけない宅建業の名義貸し|名義貸しの定義・罰則とは?

以前このサイトでは、宅建業の無免許営業について解説しました。

その記事を読んでいただけば、無免許営業がいかにやってはいけいない行為であるかを理解していただけると思うのですが、それと匹敵するくらいやってはいけないのが宅建業の名義貸しです。

今回は、宅建業の名義貸しとは具体的にどのような行為のことをいうのか?どんな罰則があるのか?について解説していきたいと思います。

名義貸しの定義

宅建業の名義貸しを定義すると、次のようになります。

名義貸しの定義

・免許を受けた者が、その免許名義を他人に貸与する行為。

名義の貸与は、口頭であるかどうか、事前・事後の承諾であるかを問われません。また、貸与が明示されておらず、黙示的であっても名義貸しに該当すると考えられています。

さらに、貸与期間が継続的ではなく一時的、一回的であって名義貸しに該当するとされています。

当然ですが、名義貸しは禁止事項!

宅建業の名義貸しは、倫理的な話ではありません。宅建業法で明確に禁止されている行為となります。

宅建業法13条1項(名義貸しの禁止)

宅地建物取引業者は、自己の名義をもって、他人に宅地建物取引業を営ませてはならない。

貸した名義の表示・広告も禁止されている!

宅建業者は、その免許名義を他人に貸すだけではなく、その名義を表示したり広告させることも禁止されています。

宅建業法13条2項

宅地建物取引業者は、自己の名義をもって、他人に、宅地建物取引業を営む旨の表示をさせ、又は宅地建物取引業を営む目的をもってする広告をさせてはならない。

表示・広告とはどのようなものか?

ここでいう表示・広告とは、無免許営業の場合と同じで、具体的には、「宅地建物取引業」という文字を用いて活動したり看板を掲示すること、「不動産仲介」や「不動産あっせん」などの表示をして、一般の人に宅建業を営んでいると誤解を与えるような表示や広告のことです。

名義を借りた者が宅建業者だったらどうなる?

宅建業者が名義貸しをした相手方が別の宅建業者であった場合はどうなるのでしょうか?宅建業法で禁止されている名義貸しに該当するのでしょうか?

この点については、最高裁判所の判例において次のように解釈されています。

最高裁判例(判決要旨の抜粋)

自己の名義をもって他人に宅地建物取引業を営ませる行為につき、その相手方が右取引業を営む免許を受けていると否とにかかわりなく、一律にこれを禁止、処罰する趣旨である。

つまり、宅建業者が別の宅建業者に名義を貸す行為も禁止ということになります。

名義を借りた者とした取引はどうなる?

宅建業者の名義を借りた者とした売買、賃貸、媒介などの取引はどうなってしまうのでしょうか?当然に無効となってしまうのでしょうか?

この点については、特段の事情がない限り有効と解釈されています。これは、名義を借りた者を信用して取引した相手方を保護するためです。

名義貸しに対する罰則

名義貸しの禁止に違反した宅建業者は、指示・業務停止処分を受ける可能性があるほか、情状が特に重いときには免許の取消処分を受けることもあり得ます。

さらに、無免許営業と同様に3年以下の懲役もしくは300円以下の罰金またはその両方が科せられる可能性があります。

また、法人や個人業者の代表・従業員などが違反をした場合は、併せて、法人に対しては1億円以下の罰金、個人業者に対しては300万円以下の罰金が科されることもあります。(両罰規定)

貸した名義の表示・広告をさせた場合の罰則

宅建業者が他人に自己の名義で宅建業を営む旨の表示や広告をさせた場合は、名義貸しと同様に指示・業務停止処分を受ける可能性があるほか、情状が特に重いときには免許の取消処分を受けることもあり得ます。

さらに、100万円以下の罰金の対象となります。

また、法人や個人業者の代表・従業員などが違反をした場合は、併せて、法人または個人業者に対して100万円以下の罰金が科されることもあります。(両罰規定)

まとめ

いかがでしょうか?名義貸しがとても危険な行為であるとこがお分かりいただけたでしょうか?

あらためてまとめると、名義貸しとは、「免許を受けた者が、その免許名義を他人に貸与する行為」のことで、次のようなケースも含まれます。

・口頭であるかどうか問われない
・事前か事後の承諾かは問われない
・貸与が明示か黙示かは問われない
・期間が継続的、一時的、一回的であるかは問われない
・貸与の相手方が宅建業者であるかは問われない

<名義貸しの罰則>
・指示
・業務の停止
・免許取消

・3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金または両方
加えて
・1億円以下の罰金(法人)
・300万円以下の罰金(個人業者)

<貸与した名義の表示・広告をさせた場合の罰則>
・指示
・業務の停止
・免許取消

・100万円以下の罰金
加えて
・100万円以下の罰金(法人・個人業者)

もしも名義貸しをしてさらにその旨を広告させた場合、とても罪が重くなることが容易に想像できるのではないでしょうか。

名義貸しも無免許営業も絶対にやってはいけません。