専任の宅地建物取引士の「専任」とは何か?兼業の可否は?

宅建業法によって、宅建業者は事務所等の規模に応じてに必ず専任の宅地建物取引士(宅建士)を設置しなければならないことになっています

宅建業法31条の3(抜粋)

宅地建物取引業者は、その事務所その他国土交通省令で定める場所ごとに、事務所等の規模、業務内容等を考慮して国土交通省令で定める数の成年者である専任の宅地建物取引士を置かなければならない。

では、この専任とは具体的に何を意味するのでしょうか?兼業は認められないのでしょうか?

今回は、専任の宅建士の専任性について解説していきたいと思います。

専任の宅建士の専任性とは?

「専任」とは、原則として宅建業を営む事務所に常勤して、もっぱら宅建業に従事する状態のことをいいます。

よって、例えば宅建業を営んでいないほかの事務所の業務と掛け持ちをしている場合や、他の会社員や公務員であるといったような、他の職業に従事していて一般社会の通念における営業時間において宅建業者の事務所等に勤務することができない状態である場合は、専任とはいえません。

宅建業の事務所内で一時的に他の業務を手伝うのは大丈夫?

宅建業以外の業種を兼業している場合で、その事務所において一時的に他の業種の業務に従事することは差し支えないとされています。

国土交通省 宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方

当該事務所が宅地建物取引業以外の業種を兼業している場合等で、当該事務所において一時的に宅地建物取引業の業務が行われていない間に他の業種に係る業務に従事することは差し支えないものとする。

他の専任性が求められる職種との兼業は?

建築士などの士業や建設業の許可を受けている営業所などは、専任の宅建士のように専任を要する業務というものがあります。(例えば、建設業の場合は専任技術者)

このような業種と宅建業を兼業する場合は、他の業種の業務量を考慮して判断することになります。

例えば、個人の宅建業者が専任の宅建士となっている場合において、同一の場所で土地家屋調査士業務を併せて行うとき、土地家屋調査士の業務の比重が大きいと専任の宅建士と認めれない可能性があるということです。

IT技術を使って他の事務所の宅建業を手伝うのはどうか?

例えば、宅建業者A社の名古屋支店の専任の宅建士が、同じくA社東京支店の業務にオンラインで従事することは差し支えないとされています。

ただしこの場合、東京支店の専任の宅建士を兼ねることができるというわけではないので注意が必要です。

国土交通省 宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方

一時的に宅地建物取引業の業務が行われていない間に、ITの活用等により、同一の宅地建物取引業者の他の事務所に係る宅地建物取引業の業務に従事することは差し支えないが、この場合において、当該他の事務所における専任の宅地建物取引士を兼ねることができるわけではないことに留意すること。

おまけ 専任の宅建士は成人であることが必須!

宅建業の事務所に設置される専任の宅建士は必ず成人でなければなりません。

宅建士の資格については、たとえ未成年者であっても法定代理人から宅建業に関して営業する許可をもらえば、宅建士の登録および宅建士証を交付してもらい宅建士になることはできますが、専任の宅建士に就任することはできません。

まとめ

いかがでしょうか?専任の宅建士の専任性について理解していただけたでしょうか?

宅建業の専任性とは、

「宅建業を営む事務所に常勤して、もっぱら宅建業に従事する状態」のことです。

<専任の宅建士に認められること>
・同一事務所内で一時的に宅建業以外の業務をする。
・他の専任性を要する職種との兼務。(宅建業の比重が大きい場合)
・ITを利用して一時的に同一会社の他の事務所の宅建業に従事する。

宅建業は兼業が多い業種になると思いますし、人員を有効活用するために流動的に従事者を使用したいというのが経営者の心情だとは思います。

しかし、専任の宅建士を別の業務に多用するなどして専任性が認められないとなると、宅建業者の事務所として成立しなくなるという大きなリスクありますので十分に注意していただきたいです。