ひょっとしたらあなたは、宅地建物取引士(宅建士)になるためには、試験(宅地建物取引士試験)にさえ合格すればよいと思っているかもしれません。
もちろん、試験に合格することは宅建士になるための大前提なわけですが、実はこれだけでは宅建士になることはできません。他にもやらなければならないことがあるのです。
今回は、宅建士になるための3ステップについて解説していきたいと思います。
ステップ① 宅地建物取引士試験に合格する
前述のとおり、まず大前提として都道府県知事が行う宅建士試験に合格する必要があります。
都道府県知事は、国土交通省令の定めるところにより、宅地建物取引士資格試験を行わなければならない。
なお、宅建士試験は年1回で基本的に毎年10月の第3日曜日に実施されます。また、正式は試験日は毎年6月の第1金曜日に発表され、申込期限は7月中となっています。
実際は都道府県知事が試験を実施しているわけではない!?
実際のところ、都道府県知事が宅建士試験を行っているいるわけではなく、一般財団法人不動産適正取引推進機構という外部機関に委託されています。
都道府県知事は、国土交通大臣の指定する者に、試験の実施に関する事務を行わせることができる。
この国土交通大臣の指定する者というのが一般財団法人不動産適正取引推進機構というわけです。また、外部機関に試験の事務を行わせる場合は、都道府県知事は試験の事務を行わないことになっています。
都道府県知事は、国土交通大臣の指定する者に試験事務を行わせるときは、試験事務を行わないものとする。
ですので、試験について都道府県のホームページを調べてみても多くの情報は得られません。しかし、多くの資格学校などが試験に関する情報を提供しているため情報収集に困ることはないでしょう。
ステップ② 都道府県知事の登録を受ける
試験勉強が報われ、晴れて宅建士試験に合格した場合、その時点ではあくまで試験合格者でしかありません。宅建士になるためには次のステップとして都道府県知事の登録を受ける必要があります。
試験に合格した者で、宅地若しくは建物の取引に関し国土交通省令で定める期間以上の実務の経験を有するもの又は国土交通大臣がその実務の経験を有するものと同等以上の能力を有すると認めたものは、当該試験を行った都道府県知事の登録を受けることができる。
「当該試験を行った都道府県知事の登録を受けることができる。」の意味
これは、宅建士の登録は試験に合格した場所の知事に受けるということにな意味します。つまり、愛知県で合格した者は東京で宅建士登録をすることはできないということです。
登録の移転は可能!
事後的に登録の移転をすることはできますが、条件として登録をしている都道府県以外の都道府県に所在する事務所において、業務に従事する(または業務に従事しようとするとき)ことが必要となります。
つまり、愛知県の営業所で働いている者が、東京都の登録だけを受けるということはできず、この場合は東京の営業所で働く(働く予定である)ことが必要となります。
そもそも、宅建士は日本どこでも活動できる!
そもそも宅建士が事務を行うことができる地域は登録地だけに制限されていません。すなわち、どの都道府県知事の登録を受けていようが日本全国で宅建士として業務をすることができるというわけです。
したがって、宅建士登録の移転は義務ではありません。
まさかのステップ2.5!?登録実務講習を受講する
宅建士試験の合格者が宅建士登録を受けるためには、宅地建物の取引に関する2年以上の実務経験が必要となります。
この実務経験が2年に満たない者は、登録実務講習を修了することにより「2年以上の実務経験を有する者と同等以上の能力を有する者」と認められ、宅建士登録の要件を満たすことができます。
法第18条第1項の国土交通省令で定める期間は、2年とする。
国土交通大臣がその実務の経験を有するものと同等以上の能力を有すると認めた者は、次のいずれかに該当する者とする。
1号 宅地又は建物の取引に関する実務についての講習であって、国土交通大臣の登録を受けたもの(以下「登録実務講習」という。)を修了した者
なお、登録実務講習を実施しているのは、国土交通大臣の登録を受けた登録実務講習実施機関が行うことになっており、具体的には資格学校などの民間企業や団体が実施しています。
宅地建物取引士になるためには、試験に合格したのち都道府県知事の登録を受け、さらに資格証を交付してもらう必要があります。 このうち、登録には欠格要件が設けられえており、それに該当すると登録を受けることができない仕組みになっ …
以前このサイトでは、宅建士になるための3ステップと称して、宅建士になるために必要な手順について解説しました。 その3ステップというのは、 1.宅建士試験に合格する 2.都道府県知事の登録を受ける 3.都道府県知事から宅建 …
ステップ③ 都道府県知事から宅地建物取引士証の交付を受ける
試験に合格した場所の都道府県知事の登録を受けたら、最後に宅地建物取引士証という資格証の交付を受ける必要があります。
登録を受けている者は、登録をしている都道府県知事に対し、宅地建物取引士証の交付を申請することができる。
宅地建物取引士 宅地建物取引士証の交付を受けた者をいう。
つまり、法律上は宅建士証の交付を受けた者が宅建士ということになり、宅建士証を受けるためには試験合格、宅建士登録、2年以上の実務経験または講習の受講までのステップが必要ということです。
試験合格から1年以上経ってしまった場合は講習の受講が必要!?
試験合格から1年以上たって後に資格証の交付を受けようとする場合は、交付申請の6か月以内に行われる講習を受けなければなりませんので注意が必要です。
宅地建物取引士証の交付を受けようとする者は、登録をしている都道府県知事が指定する講習で交付の申請前6月以内に行われるものを受講しなければならない。ただし、試験に合格した日から1年以内に宅地建物取引士証の交付を受けようとする者については、この限りでない。
まとめ
いかがでしょうか?条文が多くなってしまったので少し難しい内容になったかもしれません。
まとめると、宅建士になるためのステップは、
1.宅建士試験に合格する
2.都道府県知事の登録を受ける(2年以上の実務経験または登録実務講習の受講が必要)
3.都道府県知事から宅建士証の交付を受ける(試験合格から1年以上経つと講習の受講が必要)
この3ステップになります。
なお、試験の合格した事実は消えることはありません。したがって、とりあえず試験に合格をしておいて、将来的に資格証の交付を受けて宅建士となることは可能となります。
宅建士の資格は5年ごとに更新がありますし、社会的責任もありますので、宅建士として活動しない場合はその登録などについて慎重に検討していただいた方がよいでしょう。
参考にしてみてください。