試験合格だけじゃ宅建士にはなれない!?宅地建物取引士の登録とは?

弊所のような行政書士や弁護士、税理士などの専門職に就くためには、国家試験に合格することは大前提として、その次に「会」(行政書士会、弁護士会、税理士会など)に登録しなければその資格を使った業務をすることができません。

宅地建物取引士(宅建士)も同様に試験に合格しただけでは宅建士になることはできず、試験を受けた都道府県知事の登録を受けなければならない仕組みになっています。

さらに宅建士の場合は、別途資格証の交付手続も必要となり、宅建士として仕事をするには合格⇒登録⇒交付の3ステップを経なければなりません。

今回は、宅建士の登録にフォーカスして解説していきたいと思います。

まずは宅建業法を確認しよう!

宅建業法には宅建士の登録について次のように定められています。

宅建業法18条1項(抜粋)

試験に合格した者で、宅地若しくは建物の取引に関し国土交通省令で定める期間以上の実務の経験を有するもの又は国土交通大臣がその実務の経験を有するものと同等以上の能力を有すると認めたものは、国土交通省令の定めるところにより、当該試験を行った都道府県知事登録を受けることができる

登録先は試験を受けた都道府県知事

宅建士の登録先は、試験を受けた都道府県の知事と定められています。つまり、愛知県内で試験を受けて合格した場合は愛知県知事に登録を受けることになります。

欠格要件に注意!

ここでは詳しく解説しませんが、宅建士の登録には欠格要件があり、これに該当すると登録を受けることがでいない、すなわち宅建士になることができないので注意が必要です。

登録は義務!だけどタイミングは任意!

さて、宅建士になるためには登録は必須なんですが、すべての合格者が試験後すぐに登録を受けなければならなということではありません。

例えば、大学在籍中に宅建士試験に合格して、すぐに宅建士になるつもりがない方は、卒業してから登録を受けるという選択も可能です。

条文が「~登録を受けることができる。」となっているのはこのためです。

実務経験の有効期間に注意!

ここでは詳しく解説しませんが、宅建士の登録には宅地建物の取引に関する2年以上の実務経験(または登録実務講習の受講)が必要となります。

このうち、実務経験は登録の前10年間のものしかカウントできません。また、登録実務研修は有効期間が10年となっており、この期間内に登録を受しなかった場合は再受講となってしまいますので登録のタイミングには注意してください。

なお、登録実務講習は試験後にたくさん開催される傾向にあるようで、このタイミングを逃すと次回開催までかなり待たなくてはならないこともあるようです。

登録される事項

登録を受けると、宅地建物取引士資格登録簿に次の事項が登録されます。

登録事項
  • 氏名
  • 生年月日
  • 住所
  • 本籍または国籍(外国人の場合)
  • 性別
  • 試験の合格年月日および合格証書番号
  • 実務の経験の期間およびその内容ならびに従事していた宅地建物取引業者の商号または名称及び免許証番号(実務経験がある場合)
  • 登録実務講習の終了年月日
  • 宅地建物取引業者の業務に従事する者にあっては、当該宅地建物取引業者の商号または名称及び免許証番号

監督処分を受けた場合はその内容が記載される!?

都道府県知事から指示や禁止処分を受けた場合は、その内容と年月日が記載されることになります。

登録の移転

前述のとおり、宅建士の登録は試験を受けた都道府県の知事に受けることになっているのですが、他の都道府県にある宅建業者の事務所に勤務している、または勤務しようとする場合には、この登録を他の都道府県に移転することができます。

宅建業法19条の2(抜粋)

登録を受けている者は、当該登録をしている都道府県知事の管轄する都道府県以外の都道府県に所在する宅地建物取引業者の事務所の業務に従事し、又は従事しようとするときは、当該事務所の所在地を管轄する都道府県知事に対し、当該登録をしている都道府県知事を経由して、登録の移転の申請をすることができる。

具体的なケースは次のとおりです。

登録の移転できるケース
  • 転勤など勤務地の変更があった場合
  • 個人営業の宅建士が他の知事に免許換えした場合
  • 宅建士の登録を受けていて資格証の交付を受けていない者が、他の知事の登録を受けて資格証の交付を受けようとする場合

登録の移転は義務ではない!

そもそも宅建士は登録地がどこであっても全国で宅建士として業務を行うことができますので、職場が他の都道府県に変わったからといって必ずしも登録を移転しなければならないというわけではありません。

ただ、資格証の交付は登録先から受けなければなりませんので、すでに転勤している場合などは窓口が遠くなるといったデメリットもありますので注意が必要です。

事務禁止処分中は移転はできない!

宅建士が名義貸しなどをして都道府県知事から指示を受け、さらにその指示に従わず事務禁止処分を受けてしまった場合は、その間は登録の移転をすることはできません。

登録の変更

宅建士は、登録事項に変更があったときは、登録した知事に対して登録変更の手続きをしなければなりません。

宅建業法20条(抜粋)

登録を受けている者は、登録を受けている事項に変更があったときは、遅滞なく、変更の登録を申請しなければならない。

登録の場所は任意ですが、登録の変更は義務ですのでご注意ください。

登録に関する届出

次のような場合には登録している知事に届出をする必要があります。

登録に関する届出
  • 死亡した場合
  • 欠格要件の一部に該当した場合(宅建業法18条1項1号~8号)
  • 心身の故障により宅建士の事務を適正に行えなくなった場合

届出をすべき者と期限

届出事由によって届出をすべき者と期限が定められていますので、お間違いのないようにしてください。

届出をすべき場合 届出者 期限
死亡した場合 相続人 死亡の事実を知った日から
30日以内
欠格要件の一部に該当した場合
(宅建業法18条1項1号~8号)
本人 事実が発生した日から30日以内
心身の故障により宅建士の事務を
適正に行えなくなった場合
本人、法定代理人、同居の親族 事実が発生した日から30日以内

登録の削除

次の場合には登録を削除されることになります。

登録が削除されるケース
  • 本人から登録の削除の申請があったとき
  • 死亡等の届出があったとき、またはその届出がなくて脂肪の事実が判明したとき
  • 宅建士試験の合格の決定を取り消されたとき

まとめ

いかがでしょか?

宅建士の登録はどこでも問題ないため、遠方に登録されたままにしておられる方もいらっしゃるかもしれません。ただ、登録に関する窓口は登録地になりますので、いざというときに想定外に時間がかかってしまうといったことも起こり得ます。

このような不便が生じる可能性があることは覚えて置いてください。