標準専任媒介契約約款の内容

専任媒介契約とは、媒介(または代理)契約をした1つの宅建業者が見つけた相手方とのみ契約をすることができ、かつ依頼人自身が契約相手を見つけることが認められるというタイプの契約です。

今回は、専任媒介契約をする際に使用すべきとされている標準専任媒介契約約款の内容についてご紹介します。

標準専任媒介契約約款の内容

標準専任媒介契約約款の内容は次のとおりです。

標準専任媒介契約約款に表示されている事項
  1. 媒介契約形式の選択 
  2. 意見の根拠の明示 
  3. 契約の有効期 
  4. 2週間に1回以上の処理状況を文書により報告すること
  5. 指定流通機構(レインズ)に媒介契約の締結の穂から7日以内に依頼を受けた物件を登録し、広く契約の相手方を探索するとともに、契約の成立に向けて積極的に努力すること
  6. 目的物件を指定流通機構(レインズ)に登録をしたときには、遅滞なく、指定流通機構が発行した登録済証を依頼者に交付すること 
  7. 媒介契約の有効期間内または有効期間の満了後2年以内に、依頼者が依頼を受けた業者を排除して、紹介を受けた相手方と直接取引をした場合、業者が取引の成立に寄与した割合に応じた相当額の報酬を支払わなければならない
  8. 依頼者が他の業者の媒介や代理によって取引したときは、約定報酬額に相当する額の違約金を支払わなければならない
  9. 依頼者が自ら発見した相手方と取引したときは、依頼を受けた業者に事前にその旨を通知しなければならない
  10. 依頼者が自ら発見した相手方と取引したときは、依頼を受けた業者が専任媒介契約の履行に要した費用を支払わなければならない
  11. 専任媒介契約の有効期間内において、業者の責めに帰すことができない事由によって専任媒介契約が解除されたときは、業者は依頼者に対して専任媒介契約の履行のために要した費用の償還を請求することができる
  12. 業者の報酬請求権 
  13. 契約の解除 
  14. 特約 

標準専属専任媒介契約約款の場合と同じです。

それぞれみていきましょう。

1.媒介契約形式の選択

標準専属専任媒介契約約款と同じです。

契約書の冒頭に枠囲いで本契約が専属専任媒介契約であることを表示するとともに、専属専任媒介契約・専任媒介契約・一般毛媒介契約の3つの媒介契約のタイプについて、それぞれの特徴を説明しており、依頼人自身がこれらの契約タイプのうち適当なものを自由に選択できるようになっています。

2.意見の根拠の明示

標準専属専任媒介契約約款と同じです。

業者が媒介価格の決定に際して意見を述べるときは、根拠を示して説明しなければなりません。これは、法律上の義務を規定しているものです。

3.契約の有効期間

標準専属専任媒介契約約款と同じです。

あまり長期にわたって依頼人を拘束することがないように、有効期間は3か月以内で設定するものとし、依頼人からの文章での申出によって更新できることとされています。

有効期間は依頼人の申出により更新できることは、宅建業法で規定されていますが、文書での申出については約款において特に規定しているということです。

4.2週間に1回以上の処理状況を文書により報告すること

標準専属専任媒介契約約款においては、1週間に1回以上業務の処理状況を報告することとされていますが、標準専任媒介契約約款ぬおいては、2週間に1回以上業務の処理状況を報告することとされています。

5.指定流通機構(レインズ)に媒介契約の締結の穂から7日以内に依頼を受けた物件を登録し、広く契約の相手方を探索するとともに、契約の成立に向けて積極的に努力すること

専任媒介契約についても、専属専任媒介契約と同様に法律上、指定流通機構(レインズ)への目的物件の登録が義務付けられているので、標準専任媒介契約約款においても、レインズに物件を登録することとされています。

登録期限としては、媒介契約の締結の日から7日以内であり、これには媒介契約締結の日および依頼を受けた業者の休業日は含まれません。

6.目的物件を指定流通機構(レインズ)に登録をしたときには、遅滞なく、指定流通機構が発行した登録済証を依頼者に交付すること

標準専属専任媒介契約約款と同じです。

依頼人が依頼した物件が指定流通機構(レインズ)に登録されたことを確認できるようにするために、業者は物件登録の際にレインズが発行する登録済証を遅滞なく依頼人に交付することとされています。

7~10.依頼者の義務に関する事項

7~10の事項は、依頼者の義務の関する事項のうち契約当事者間の負担の調整に関するものです。

専任媒介契約では、他の業者を通して取引することは禁止しているが、依頼人が自ら発見した相手方と取引することまでは禁止されていません。

しかし、専任媒介契約の依頼を受けた業者は、成約へ向けて通常以上の努力をしているので、依頼人との間の負担の調整を入る必要があり、このような規定がおかれています。

11.専任媒介契約の有効期間内において、業者の責めに帰すことができない事由によって専任媒介契約が解除されたときは、業者は依頼者に対して専任媒介契約の履行のために要した費用の償還を請求することができる

専任媒介契約の依頼を受けた業者は、成約に向けて通常以上の努力をしているので、もし仮に業者の責めに帰すことができない事由によって媒介契約が解除されたときには、依頼人との間の負担の調整を図る必要があるため、このような規定が設けられています。

12.業者の報酬請求権

標準専属専任媒介契約約款と同じです。

宅建業者はその媒介によって制約に至った場合のみに報酬を請求できることとされています。これは、従来からの慣行とされてきた成功報酬主義を明文化したものです。

ただし、業者が報酬を請求するためには、契約が有効に成立していることが必要であり、停止条件付で成立したような場合には、その停止条件が成就するまでは報酬の請求ができないことになります。

また、宅建業法では事後的な紛争を避けるため、宅建業者が当事者としてまたは媒介により行う契約について、契約内容を記載した書面を契約成立後遅滞なく業者が相手方に交付することが義務付けられています。

宅建業法37条1項

宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換に関し、自ら当事者として契約を締結したときはその相手方に、当事者を代理して契約を締結したときはその相手方及び代理を依頼した者に、その媒介により契約が成立したときは当該契約の各当事者に、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。

報酬受領の時期は、この書面の交付の後であればよいので、例えば、書面交付直後に報酬の半分、契約の履行終了後にさらに半分受領するように特約をするのは問題ありません。

最後に、宅建業者は依頼人から特別に依頼を受けた広告の料金や遠隔地への出張旅費については、約定報酬とは別に依頼人に対して実費の支払いを請求することができることとされています。

業者はこのような特別な依頼を受けたときは、あらかじめ依頼人に対して請求する費用の見積りを説明してから実行するとともに費用の請求を行うときには、明細を示して行う必要があります。

停止条件とは?

停止条件とは、将来発生することが不確実な事実を契約等の効力の発生要件とする場合の不確定な事実をいいます。

例えば、「宅建試験に合格したら給料を2倍にする。」という約束をした場合、「宅建試験の合格」が停止条件となります。

13.契約の解除

標準専属専任媒介契約約款と同じです。

契約の解除については、互いの債務不履行を理由とする催告を要する解除のほかに、業者側に依頼人の信頼を失わせるような不正不当行為があった場合等に、依頼人側から催告することなしに媒介契約を解除することが認められています。

これは、媒介契約が当事者間の信頼関係によって成立するもであるため、宅建業者に配信的行為があった場合は、その行為の相手方が依頼人でなくても解除が認められています。

13.特約

標準専属専任媒介契約約款と同じです。

標準専任媒介契約約款の所定の事項に他にも、当事者の合意によって特約をすることができます。また、約款の各条項に定められていることについても特約をることができますが、依頼人に不利な特約は無効となります。

なお、一定の期間内に目的物件が売却できなかったときは、宅建業者が媒介価格を下回る価格で買い取る旨の特約は、売主が宅建業者に安く売ることを義務づけず、売主の希望であれば宅建業者が買い取るべきことを定めたのみであれば差し支えないとされています。

標準専任媒介契約約款の様式

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