媒介契約のタイプ別メリット&デメリット

前回の記事では、媒介契約のタイプとその特徴について解説をしました。

今回は、媒介契約のタイプごとにそのメリットとデメリットを挙げてみたいと思います。

もし媒介契約のタイプについてまだよくわかっていないという方は、まず前の記事を読んでいただいた方がより理解が深まると思います。

媒介契約のタイプを少し復習

まずは媒介契約にどんなタイプがあるのかを復習しましょう。

媒介契約の3タイプ+α
  1. 専任媒介契約
  2. 専属専任媒介契約
  3. 一般媒介契約(明示義務あり or 明示義務なし)

専任媒介契約のメリット・デメリット

依頼人が他の業者に重ねて媒介や代理を依頼することを禁止する契約(依頼人が自ら探した相手との契約はOK)

メリット

依頼を受けた宅建業者が、他の業者から取引を横取りされるおそれがなく、契約相手を探すために支出した費用も無駄となりにくくなります。

よって、契約相手を探すための積極的な努力を期待することができ、これによって依頼人は成約までに要する期間を短縮できるというメリットがあります。

依頼人自身が探した相手と契約することが認められるため、例えば家族や親族、知り合いの方と個人で契約することもでき、このとき仲介手数料も不要となります。

デメリット

依頼人からすると、他に有利な取引条件を持つ業者がいたとしても専任媒介契約の有効期間内は他の業者には依頼できないため、有利な取引機会を逃すおそれがあります。

また、媒介契約には依頼人に対して業務の進捗を報告する義務(業務処理状況報告義務)があるのですが、専属専任媒介契約が1週間に1回以上であるのに対し、専任媒介契約では2週間に1回以上となっており、進捗状況の確認のペースが遅くなります。

専属専任媒介契約のメリット・デメリット

依頼人が他の業者に重ねて媒介や代理を依頼することを禁止する契約(依頼人が自ら探した相手との契約も×)

メリット

基本的には専任媒介契約のメリットと同じです。(ただし、依頼人が自ら契約相手を探すことはできない。)

業務処理状況報告義務が1週間に1回以上となっているため、進捗をこまめに確認することができます。

デメリット

基本的には専任媒介契約のデメリットと同じです。

しかし、1つの業者との契約となり、自ら相手を探すことも禁止されるため、集客力や販売力が無い宅建業者だった場合、なかなか売買契約が成立しないというおそれがあります。

一般媒介契約(明示義務あり)のメリット・デメリット

他の業者に重ねて媒介や代理を依頼することが許される契約で、他に媒介や代理を依頼した業者を明示する義務があるもの。

メリット

依頼人にとって、他に有利な取引条件を持つ業者がいる場合には、重ねて他の業者にも媒介を依頼をすることができます。

業者にとって、依頼人が他にどのような業者に依頼しているかを把握することができるため、明示されていない業者に物件を横取りされることがありません。

デメリット

業者にとって、他の依頼を受けた業者を把握できるとはいえ複数の業者に依頼がなされるため、いずれの業者も成功報酬を得られる保証がなく、成約に向けて努力をしなかったり、積極的に費用を使って契約相手を見つけようとしないおそれがあります。

また、組織的な情報交換が行われ、不動産流通市場が整備されてくると、そもそも複数の業者に依頼する必要性がなくなるかもしれません。

一般媒介契約(明示義務なし)のメリット・デメリット

他の業者に重ねて媒介や代理を依頼することが許される契約で、他に媒介や代理を依頼した業者を明示する義務がないもの。

メリット

基本的に明示義務がある場合と同じです。(他の業者の情報は明示されません。)

デメリット

基本的に明示義務がある場合と同じです。

さらに業者にとっては、他にどの業者に依頼しているのかが把握できないため、物件を横取りされる危険感を常に持ち続けることになります。

また、不動産流通市場が整備されてきたとしても、明示義務がないタイプでは業者が物件情報をオープンにすることをためらい、市場に物件がでてこなくなるおそれがあります。

まとめ

まとめとして表にしてみました。

媒介契約のタイプ メリット デメリット
専任 ・物件を横取りされない
・業者の積極的な努力が期待できる
・成約までの時間を短縮できる
・依頼人自身で相手を探せる
・他の業者に重ねて依頼できない
・有利な取引条件を逃すおそれがある
・業務処理状況報告が遅いペース
専属専任 ・物件を横取りされない
・業者の積極的な努力が期待できる
・成約までの時間を短縮できる
・業務処理状況報告が早いペース
・他の業者に重ねて依頼できない
・有利な取引条件を逃すおそれがある
・依頼人自身で相手を探すのは禁止
・業者によっては良い成果が出ないおそれがある
一般 明示義務あり ・他の業者に重ねて依頼できる
・他に依頼している業者を把握できる
・依頼されていない業者に物件を横取りされない
・報酬を得られる保証がない
・成約に向けて努力を怠るおそれがある
明示義務なし ・他の業者に重ねて依頼できる
・他に依頼している業者を把握できない
・他に依頼している業者を把握できない
・報酬を得られる保証がない
・物件を横取りされるおそれがある
・市場に物件が出てこなくなるおそれがある