宅建業免許は申請すれば必ず受けられるものではありません。宅建業法には欠格事由がいくつか定められていて、これに1つでも該当すると免許を受けることができません。欠格事由とは、免許を受けられない要件のことです。
国土交通大臣又は都道府県知事は、第3条第1項の免許を受けようとする者が次の各号のいずれかに該当する場合又は免許申請書若しくはその添付書類中に重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けている場合においては、免許をしてはならない。
反対に、この欠格事由に該当しなければ免許を受けられる可能性がぐっと高くなります。では、一体どのような欠格事由が定められているのでしょうか?
今回は、欠格事由の具体的な内容について掘り下げていきたいと思います。
なお前回の記事では、導入としてまず欠格事由の対象となる者について解説しました。まだ読んでいないい方はそちらを先に読んでいただくとより理解が深まると思います。
宅建業免許は申請すれば必ず受けられるものではありません。宅建業法には欠格事由がいくつか定められていて、これに1つでも該当すると免許を受けることができません。欠格事由とは、免許を受けられない要件のことです。 宅建業法5条 …
宅建業の欠格事由
まずは欠格事由をざっくり挙げていきます。
- 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
- 免許の取消し処分を受けた者
- 刑事罰処罰者等
- 不正・不当行為をした者
それぞれ詳しくみていきます。
1.破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
破産手続き開始の決定とは、債務の弁済が不可能となった者が破産法に基づき自己破産する申出を裁判所に行い、これに対し裁判所が債務弁済は不可能であると判断して破産の手続きを開始する決定のことです。
また、復権とは、裁判所から破産手続開始の決定を受け破産手続きを行っている間は、一部の資格および職業が制限(例えば取引士、旅行業など)されることになります。
破産手続きが終わるとこの制限が解除されるのですが、これを復権といいいます。
つまり、自己破産してその破産手続きが終了していない(もしくは破産手続開始後から10年経過していない)者は宅建業免許を受けることはできないということです。
2.免許の取消し処分を受けた者
次の3つのいずれかに該当したことで免許取消処分を受け、その免許取消しの日から5年を経過するまでは、再び宅建業免許を受けることはできません。
- 不正な手段により宅建業免許を受けたこと。
- 業務停止処分事由に該当し情状が特に重いこと。
- 業務停止処分に違反したこと。
免許取消処分を免れるために廃業してもダメ!
上記のような免許取消処分を受けるような行為をした者が、行政からの処分を免れるために廃業の届出をした場合であっても、届出の日から5年を経過するまでは再び宅建業免許を受けることができない仕組みになっています。
アウトになる廃業届のタイミング
具体的にどのタイミングで廃業の届出をすると欠格事由に該当するかというと、上記3つの事由に該当する理由で免許取消処分の聴聞の期日および場所が公示された日から処分までの日または処分を決定する日までの間ということになっています。
免許取消処分を免れるために役員を辞任してもダメ!
行政からの免許取消処分を免れるために役員を辞任したとしても、その取消しに係る聴聞の期日および場所の公示があった日の前60日以内に役員であった者は欠格事由の対象となります。
3.刑事罰処罰者等
次のような刑罰または処罰を受けた者、暴力団に関係する者は宅建業免許を受けることはできません。
- 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
- 傷害罪、現場助勢罪、暴行罪、凶器準備集合罪、脅迫罪、背任罪、暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯し、罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
- 暴力団対策法に違反したことにより、罰金に処せられ、その刑の執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
- 暴力団対策法に基づく暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
- 暴力団員等が事業活動を支配している場合
罪によって、欠格事由に該当することになる刑罰(禁固or罰金)が変わるところがポイントです。
「刑の執行を終わった」とは?
現実に刑の執行が完了した場合のほか、仮出獄を取り消されることなくして刑期を経過した場合も含みます。
「刑に執行を受けることがなくなった」とは?
刑の時効が完了した場合、仮出獄中における刑期満了等の事由により刑の執行を免除された場合のことです。
4.不正・不当行為をした者
次の事項に該当する者は宅建業免許を受けることはできません。
- 免許の申請前5年以内に宅建業に関して不正または著しく不当な行為をした者
- 宅建業に課に関して不正または不誠実な行為をするおそれがある者
「不正または著しく不当な行為」とは?
不正または著しく不当な行為とは、個々のケースに応じて判断するもとされていますが、例えば次のような場合が該当すると考えられています。
- 無免許で営業する。
- 無免許業者と提携して業務行動をする。
- 取引の相手方の無知や不注意に便乗して不当な取引行為を行う。など
なお、不正または不誠実な行為をするおそれがあるかどうかの判断についても、個々のケースに応じて判断することになっているのですが、例えば、過去において宅地・建物の取引等に関して詐欺、脅迫その他の不正行為や重大な契約違反等の不誠実な行為をしたことがある場合は欠格事由に該当すると考えられています。
まとめ
いかがでしょうか?かなり情報量が多くなってしまいましたが、欠格事由の内容をご理解いただけたでしょうか?
少なくとも、善良な一般人であればまず欠格事由に該当することはないとお分かりいただけたと思います。
あらためて復習すると、宅建業の欠格事由は大きく分けて次の4つです。
・破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
・免許の取消し処分を受けた者
・刑事罰処罰者等
・不正・不当行為をした者
念のために確認しますが、これらの欠格事由に該当してはいけないのは、役員と政令で定める使用人(支店長など)だけです。この点は誤解のないようにしてください。
宅建業免許は申請すれば必ず受けられるものではありません。宅建業法には欠格事由がいくつか定められていて、これに1つでも該当すると免許を受けることができません。欠格事由とは、免許を受けられない要件のことです。 宅建業法5条 …