宅建業をはじめる際に営業保証金の供託を選択した宅建業者が廃業などの理由によって宅建業を廃止する場合、営業保証金を供託し続ける理由がなくなります。
このような場合、供託してある営業保証金払い戻しを受ける必要があるのですが、これを営業保証金の取戻しといいます。
今回は、この営業保証金の取戻しについて解説していきたいと思います。
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営業保証金の取戻しができる場合
営業保証金の取戻しができるのは、次のような場合に限定されます。
- 免許の有効期限が経過したが、更新を受けなかったとき
- 宅建業者の破産、法人の合併および破産以外の理由による解散、宅建業の廃止の届出により免許が効力を失ったとき
- 宅建業者の死亡や法人の合併による消滅により免許の対象がなくなり、免許の効力がなくなたっとき
- 免許を受けた後、営業保証金の供託済届を提出しないため、免許取消処分を受けたとき
- 免許の取消処分を受けたとき
- 一部の事務所を廃止したことにより、営業保証金の額が所定の額を超えることとなったとき
- 金銭および有価証券または有価証券のみをもって供託している場合において、主たる事務所を移転し、最寄りの供託所が変更になったため、移転後の主たる事務所の最寄りの供託所に営業保証金を供託したとき
このうち、1~5の場合については、従来宅建業者であった者またはその承継人が取戻し請求権を有します。
一方、6と7の場合は、宅建業者自身が取戻し請求権を有します。
取戻しをするにはまず公告が必要!
供託されている営業保証金について、還付を受ける請求権を有する者がいるにも関わらず、知らない間に営業保証金の取戻しが行われてしまうと、損害の賠償を受ける機会が失われてしまいます。
このようなことがないように、営業保証金の取戻しをしようとする者は、還付請求権を有する者は免許を付与した大臣または都道府県知事に対して還付請求権を有する旨を所定の期間内に申し出るべきこと、所定の期間内に申出所の提出がないときは営業保証金が取り戻されること等をあらかじめ広告しなければなりません。
公告とは?
公告とは、官報その他の方法により、特定の利害関係者に限らず広く会社の情報を公開することをいいます。
ちなみに官報とはこんなもの
官報とは、日本の機関紙であり、国が発行する日刊新聞のようなものです。宅建業者が営業保証金の取戻しをする際の広告は官報に掲載することで行います。
広告が不要なケースもある!?
次の2つの場合は事前の広告は不要とされています。
- 営業保証金の取戻しができる事由が発生してから10年経過したとき
- 営業保証金に有価証券が含まれる場合で、主たる事務所の移転によって取戻し請求をする必要があるとき
官報への掲載方法
官報へ掲載方法は、全国官報販売協同組合に申し込みをすることで掲載できるようになっています。
申込方法は次の3通りあります。
- ホームページの入力フォームから
- 掲載申込書をメールで送信する
- 郵送またはFAX
一番おすすめなのは、入力フォームを利用した申込です。申し込み後からその後の連絡までとてもスムーズだと思います。
公告には掲載料金がかかる!
公告には行数に応じた掲載料金がかかります。内容にはよりますが、宅建業の営業保証金に関する広告だと、30,000円~40,000円の間くらいになると思います。
まだ先は長い!?公告後6か月待つべし!
残念ながら、公告に掲載されたからといってすぐに供託金が戻ってくるというわけではありません。
還付請求権を有する者が申し出るためには一定の期間が必要とされており、その期間は6か月となります。つまり、少なくとも6か月は待たなくてはならないということです。
広告が掲載されたら免許権者へ届出が必要
営業保証金の取戻しをしようとする者が公告をしたときは、遅滞なくその旨を免許権者へ届け出なければなりません。(営業保証金取戻し公告届)
営業保証金の取戻しをしようとする者が公告をしたときは、遅滞なく、その旨を国土交通大臣又は都道府県知事に届け出なければならない。
最後にもう一頑張り!還付請求がないという証明を請求する
公告掲載後6か月経っても還付の申出がなかった場合、その旨の証明書の交付を免許権者に請求します。(債権の申出のない証明願)
当該公告に定める期間内に、申出書の提出がなかったときは、その旨の証明書の交付を国土交通大臣又は当該都道府県知事に請求することができる。
供託所へ申請してようやく取戻し完了!
免許権者から交付された債権の申出のない証明書を供託物払渡請求書に添付して供託先に申請すると、ようやく営業保証金の取戻しを受けることができます。
まとめ
いかがでしょうか?
営業保証金は、宅建業を廃業などした場合に自動的に払い戻されるものではなく、自主的に手続きを行って進めていかなくてはなりません。
ひとつひとつの手続き自体はシンプルなものですが、複数の手続きとなるうえに半年程度時間がかかりますので、このタイムラグには十分注意して資金繰りをしていただく必要があるかと思います。
参考にしてみてください。