宅建業の営業保証金|供託だけじゃなく還付についても理解しておこう!

以前このサイトでは、営業保証金の供託についてご紹介しました。宅建業をはじめようとするとき、または営業所を増設しようとするときに必要となるのが営業保証金の供託です。

この営業保証金は、自動車の強制加入保険である自賠責保険のようなもので、宅建業者との取引によって損害を被った消費者などが宅建業者に対して損害賠償請求権を持った場合に、営業保証金からその弁済を受ける(還付)ことができるというものです。

宅建業法27条

宅地建物取引業者と宅地建物取引業に関し取引をした者(宅地建物取引業者に該当する者を除く。)は、その取引により生じた債権に関し、宅地建物取引業者が供託した営業保証金について、その債権の弁済を受ける権利を有する。

供託をしたあと順調に営業を続けていれば、還付については考える必要もないため、宅建業法の中でも注目をされない部分かもしれません。しかし、いざというときに営業保証金に救われるということもあるかもしれませんので、知っていて損はないと思います。

そこで今回は、営業保証金の還付について取り上げてみたいと思います。なお、ここでは還付の方法については解説しておりませんのであらかじめご了承ください。

還付を受けることがでいる者は誰?

還付を受けることができるも者は、「宅地建物取引業者と宅地建物取引業に関し取引をした者」に限られます。

例えば次のような者が該当します。

還付を受けることができる者の具体例
  • 宅地建物の購入者
  • 媒介・代理を依頼した者 など

反対に、還付を受けることができない者の例はこちらです。

還付を受けることができない者の具体例
  • 広告料を支払ってもらえない広告業者
  • 給料を支払ってもらえない宅建業者の使用人 など

これらの者は、宅地建物について取引をした者ではないため、営業保証金による救済を受けることはできません。ちなみに、営業保証金からの支払いがされないという意味であって、損害賠償請求ができないという意味ではないのでお間違いのないようにしてください。

宅建業者は対象外であることに注意!

たとえ宅建業者と宅地建物に関する取引をした者であっても、それが宅建業者である場合は営業保証金の還付を受けることはできません。

これは、宅建業者は専門知識や経験を有していて、適切な判断をすることができ、保護する必要性が低いと考えられているためです。

取引により生じた債権が必要!

還付を受けるためには、「取引によって生じた債権」が存在することが必要となります。債権とは、相手に何らかの行為を請求する権利と理解していただけばOKです。

例えば、次のようなものが該当します。

取引によって生じた債権の具体例
  • 売買代金の請求権
  • 宅建業者の債務不履行や不法行為によって生じた損害賠償請求権

還付によって供託金が減ってしまったらどうなる?

例えば、宅建業者の取引相手が、取引によって生じた債権の弁済に充てるため営業保証金の還付が行われた場合、営業保証金が減ってしまうことになります。

この場合、宅建業者は不足額を追加で供託しなければなりません。

宅建業法28条1項(抜粋)

宅地建物取引業者は、営業保証金が不足することとなったときは、2週間以内にその不足額を供託しなければならない。

営業保証金が還付されると、供託所は還付請求者が提出した通知書を免許権者に送付することになります。この通知書を受けた免許権者は、宅建業者に対して営業保証金が不足したことを通知します。宅建業者は通知書を受けた日から2週間以内に不足額を供託しなければなりません。

まとめ

いかがでしょうか?営業保証金の還付について理解を深めていただけたでしょうか?

営業保証金の還付を受けることができる条件は、

・宅建業者と宅地建物に関する取引をした。
・取引で生じた債権がある。
・宅建業者ではない。

この3つとなります。

宅建業者は不動産取引のプロということで、救済されない仕組みになっている点に注意してください。