重要事項説明の内容|都市計画法・建築基準法等の法令に基づく制限の概要

宅建業者は、取引の相手方(売主、貸主を除く)に対して、事前に一定の重要な事項について宅建士に説明させなければならないことになっています。

これを重要事項説明といいますが、この重要事項説明の内容には、宅建業法に定められた必ず説明しなければならない法定の説明事項があります。

宅建業法35条1項(抜粋)

宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面を交付して説明をさせなければならない。

ここでは、法定の説明事項のうちの「都市計画法・建築基準法等の法令に基づく制限の概要」について詳しく解説していきます。

都市計画法・建築基準法等の法令に基づく制限の概要

説明すべき法令に基づく制限の概要については、正式には宅業業法において次のように記されています。

宅建業法35条1項2号(抜粋)

都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限で契約内容の別に応じて政令で定めるものに関する事項の概要

これは、宅地建物の使用、収益または処分等につき、公法上の制限がある場合にはこれを説明させ、これらの制限を知らないまま取引をして思わぬ損害を受けないようにするためのものです。

説明すべき法令に基づく制限

説明すべき制限は、業者としての注意を払えば容易に知り得る事項に限られていいて、通常の業務ではない特殊な業務を行う場合、または特殊な用途に供する建物を建てる場合などに適用される特殊な制限は含まれていません。

また、契約の目的物・契約の種類に応じて説明事項が分かれて、具体的には次の3つに区分されています。

3つの契約パターン
  1. 宅地または建物の貸借の契約以外の契約
  2. 宅地の貸借の契約
  3. 建物の貸借の契約

区分① 宅地または建物の貸借の契約以外の契約

宅地または建物の貸借の契約以外の契約とは、宅地建物の売買・交換の契約のことを意味しています。

この区分では、土地または建物の所有者に適用される制限について説明するものとし、例えば都市計画法・建築基準法に基づく建築制限、所有権等の譲渡制限等が挙げられます。(令和6年現在)

宅地建物の売買・交換の契約の場合に説明すべき法令の制限(令和6年現在)

都市計画法、建築基準法、古都保存法、都市緑地法、生産緑地法、特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法、
景観法、土地区画整理法、大都市法、地方拠点都市地域の整備及び産業業務施設の再配置の促進に関する法律、
被災市街地復興特別措置法、新住宅市街地開発法、新都市基盤整備法、市街地改造法、
首都圏の近郊整備地帯及び都市開発区域の整備に関する法律、
近畿圏の近郊整備区域及び都市開発区域の整備及び開発に関する法律、流通業務市街地の整備に関する法律、
都市再開発法、幹線道路の沿線の整備に関する法律、集落地域整備法、
密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律、地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律、
港湾法、住宅地区改良法、公用地の拡大の促進に関する法律、農地法、
宅地造及び特定盛土等規制法、マンションの建替え等の円滑化に関する法律、
長期優良住宅の普及の促進に関する法律、都市公園法、自然公園法、首都圏近郊緑地保全法、
近畿圏の保全区域の整備に関する法律、都市の低炭素化の促進に関する法律、水防法、下水道法、河川法、
特定都市河川浸水被害対策法、海岸法、津波防災地域づくりに関する法律、砂防法、地すべり等防止法、
急傾斜地の放火による災害の防止に関する法律、
土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律、森林法、森林経営管理法、道路法、
踏切道改良促進法、全国新幹線鉄道整備法、土地収用法、文化財保護法、航空法、国土利用計画法、核原料物質、
核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律、破棄物の処理及び清掃に関する法律、土壌汚染対策法、
都市再生特別措置法、地域再生法、高齢者、障害者等に移動等の円滑化に関する法律、災害対策基本法、
東日本大震災復興特別区域法、大規模災害からの復興に関する法律、
重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律

区分② 宅地の貸借の契約

宅地の貸借の契約については、区分①(宅地建物の売買・交換の契約)の制限のうち土地の所有に限って適用されるもの以外のものを説明事項としています。

つまり、区分①のリストから次の事項を除いた制限を説明することになります。(条項の詳細は省く)

区分①から除かれる土地の所有に限って適用される事項(令和6年現在)
  • 都市計画法の一部
  • 新住宅市街地開発法の一部
  • 新都市基盤整備法の一部
  • 流通業務市街地の整備に関する法律の一部
  • 文化財保護法の一部

区分③ 建物の貸借の契約

建物の貸借の契約については、区分①(宅地建物の売買・交換の契約)の制限のうち建物の賃借人にも適用される制限のみが規定されており、建物の賃借権の設定・移転に関する制限を説明事項とすることとされています。

具体的には次のとおりです。(令和6年現在)

区分①のうち賃借人にも適用される事項(令和6年現在)
  • 新住宅市街地開発法32条1項
  • 新都市基盤整備法51条1項
  • 流通業務市街地の整備に関する法律38条1項