宅建業で最重要!?重要事項説明についてしっかり理解しておこう!

もしあなたがアパートやマンションで一人暮らしをしている、もしくはしたことがあるとしたら、賃貸契約時に宅建士の方と面と向かって物件に関するいろいろな説明を受けたことがあるのではないでしょうか。

これは一般的に「重要事項説明」と言われるもので、宅建業者や宅建士にとって最も大事な業務の一つになります。略して「重説」と言われることもあります。

宅地建物の借主(買主)等が取引の対象となる宅地建物の性状、権利関係、法令上の制限、取引条件などを十分に認識せずに契約してしまうことで契約後に思わぬ損害を受けるといった事態を避けるために、宅建業者は取引相手に対して契約締結の前提として認識しておくべき一定の重要事項について説明する義務を負っています。

あなたが宅建士であるならば、先輩から教わったとおり機械的に説明するのではなく、重要事項説明について根本から理解しておくことでより宅建士として成熟すると思います。

そこで今回から複数回に分けて、この重要事項説明について詳しく解説をしていきたいと思います。

内容からして情報量がかなり多くなる予定ですので、たくさんのリンクを貼ることになると思います。興味がある情報のページに移動していただき、理解を深めてください。

重要事項説明の趣旨

宅地建物の買主や借主にとって、これから購入したり借りようとしている物件が抵当権などの担保物件や地上権のような用益物権の対象となっていると、予定していた建築物を建てることができないなど後々思わぬ損害を被る恐れがあります。

また、契約の解除や違約金など取引の諸条件が不明確でこれを十分に納得しないまま契約を締結してしまい、後になって紛争に発展したりすることも考えられます。

このような事態が起こらないようにするために、宅地建物の取引の当事者が、対象となる宅地建物にする法律上の権利関係、都市施設の整備、取引の条件などの重要事項について十分に調査し、確認したうえで契約は締結されなければなりません。

しかし一般消費者は、不動産に関する権利関係や法令上の制限等を自分で調査することが困難であるため、十分な知識を持ち合わせていないのが通常です。

一方で宅建業者は、宅地建物の取引を扱う専門の業者であるため、不動産取引のプロとして必要な調査等に関する十分な知識を持ち、調査能力も備えているはずです。また、業者と取引する者もそのような能力に期待していると考えられます。

ですから、業者としてはそのような期待に応えるため、必要な事項について顧客に対して説明をすべき責任があるというわけです。

そこで、宅建業法では取引の相手方に対して一定の重要な事項について事前に説明を行うことを業者に義務付けられています。

宅建業法35条1項(抜粋)

宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面を交付して説明をさせなければならない。

重要事項説明の対象者

宅建業者が重要事項説明を行うべき対象者は次のとおりです。

重要事項説明の対象者
  1. 宅建業者が宅地建物の売買、交換の当事者となる場合は、買主となろうとする者、交換により物件を取得しようとする者、それらの代理人
    賃貸は含まれていない点に注意
  2. 宅建業者が宅地建物の売買、交換、貸借の代理をする場合は、買主となろうとする者、交換により物件を取得しようとする者、借主となろうとする者、それらの代理人
  3. 宅建業者が宅地建物の売買、交換、貸借の媒介をする場合は、買主となろうとする者、交換により物件を取得しようとする者、借主となろうとする者、それらの代理人

宅建業者が賃借する場合は重要事項説明は不要!?

いま一度、重要事項説明の条文確認しますと、条文に「貸借の相手」とあって、特にそれに関する例外規定はありません。

宅建業法35条1項(抜粋)

宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面を交付して説明をさせなければならない。

よって文言とおりに解釈すると、宅建業者が貸主の場合には例外なくすべての借主について重要事項説明をしなければならないと解釈することになるかと思います。

しかし、宅建業法の制定・改正の経緯を踏まえると、宅建業者が宅地建物を賃借する行為は、「宅地建物取引」に該当しないことになるため、「貸借の相手」の文言は空振りになっていると考えられています。

宅建業者が賃借の当事者になる取引は宅建業に該当しない!

すでにこのサイトでは解説しているのですが、賃貸の代理や媒介については宅建業に該当するものの、宅建業者が賃貸の当事者になる取引は宅建業に該当していません。

宅建業に該当する4つの取引行為
  • 宅地・建物の売買
  • 宅地・建物の交換
  • 宅地・建物の売買、交換または賃借(使用貸借を含む)の代理
  • 宅地・建物の売買、交換または貸借(使用貸借を含む)の媒介

売主または貸主にも重要事項説明をしておくのがベター

宅建業法の解釈としては、売主または貸主となろうとする者に対して重要事項説明をする義務はありません。

しかし、買主または借主に対して重要事項説明として説明する事項を売主、貸主も同様に認識していることは紛争防止の観点から望ましいとされています。

重要事項説明の主体となる者

重要事項説明は、宅建業者が宅建士に行わせるものであることは宅建業法の条文から読み取れると思いますが、1つの取引に複数の宅建業者が売主、媒介業者として関与する場合はどうなるのでしょうか?

この場合は、実務上、いずれかの宅建業者が重要事項説明書を作成してこれを交付し、説明を行うのが通例となっています。ただし、重要事項説明書にはすべての宅建業者の取引士が記名をします。
(※押印は令和4年5月18日から不要になりました。)

しかし宅建業法の原則では、取引に関与したすべてが売主業者または媒介業者の立場から重要事項説明を行う義務を負うとされています。

よって、複数の宅建業者のいずれかに属する取引士が代表して重要事項説明を行ったとしても、他の宅建業者が重要事項説明義務を免れるというわけではなく、重要事項説明の内容に誤り、不足があったときは取引に関与した宅建業者は各々が宅建業法に違反となります。

ですから、重要事項説明の際には、取引に関与したすべての宅建業者に所属する宅建士が立会いをした方が無難です。

重要事項説明の時期

重要事項説明をするべき時期は、「その売買、交換または貸借の契約が成立するまでの間」と宅建業法で定められています。

しかし、購入者等がその物件につい十分に理解し、よく考えて契約を締結することができるように、できるだけ早い時期(取引物件がある程度特定した段階)に説明をすることが適当であるとされています。

重要事項説明の内容

説明義務の範囲

重要説明事項で説明すべき内容は、宅建業法に16の項目(法定重説事項)が定められているため、これらは当然に説明されるべきものになります。

同時に条文に「少なくとも~について」という文言があり、さらに宅建業者は宅地建物取引の専門家として高度な注意義務を負っていることから、法定重説事項以外でも、これに準ずるものは説明すべき事項であると解されています。

説明すべき事項かどうかの判断について

説明すべき事項であるか否かについては、取引目的(動機)、物件の性状(心理的瑕疵を含む)、当事者の属性(職業)、取引過程(経過)などを勘案して、個々の取引に即して判断することになります。

その際には、意思決定に影響を及ぼすか(知っていたら買わなかったなど)、価格や用法に影響を与えるかといった点が判断要素となります。

また、法定重説事項以外の事項について取引の相手方から宅建業者に対して質問や指示がなかった場合であっても、取引の目的が達成されないなどの可能性があることが示唆する情報を認識している場合には、説明する義務があるとされています。

法定重説事項を説明しなかったらどうなる?

前述のとおり、16項目の法定重説事項は「少なくとも」説明しなければならないという宅建業者の最低限の義務として規定されているものであり、これを過失によって説明しなかった場合にも宅建業者は免責されません。

また、これらの他にも説明すべき重要な事項はあり得るため、もしそれについて説明を怠った場合は宅建業法違反に問われることもありますので注意が必要です。

重要事項説明における宅建業者の調査義務

重要事項の説明方法

宅建業者が信託受益権の売主となる場合の重要事項説明(自ら宅地建物を信託するとき)

宅建業者が自ら宅地建物を信託し、信託受益権の売主となる場合には、売買の相手方に対して信託財産である宅地建物について重要事項説明を行わなければなりません。

宅建業法35条3項(抜粋)

宅地建物取引業者は、宅地又は建物に係る信託(当該宅地建物取引業者を委託者とするものに限る。)の受益権の売主となる場合における売買の相手方に対して、その者が取得しようとしている信託の受益権に係る信託財産である宅地又は建物に関し、その売買の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、説明をさせなければならない。

信託受益権とは?

信託受益権とは、信託財産から生じる経済的利益を受け取る権利のことをいいます。

例えば、ビルを所有している宅建業者Aがビルを信託銀行Bへ信託した場合、Bはビルを運営、管理して賃料などの収益を得ます。このとき信託受益権がA自身に設定されていれば、Aがこの収益を受取ことができます。また第三者(例えばAの子C)が受け取るということもできます。

Aが自ら宅地建物を信託していてかつ信託受益権を持っているとき、その権利を第三者に売却する場合には信託受益権を買う第三者に対して重要事項説明が必要となるわけです。

罰則について