宅建業の営業保証金|保管替えとは何か?供託金が2倍必要になるケースも!?

宅建業をはじめようとするとき、法務局へ供託金(営業保証金)を納めるか、保証協会へ入会して弁済業務保証金分担金を支払うかのいずれかを必ず選択しなければなりません。

このうち、営業保証金の供託を選択した場合においては、供託金は主たる事務所の最寄りの法務局(供託所)へ供託されなければならないことになっています。

では、例えば事務所の移転があって主たる事務所の所在が変更になった場合はどうなるのでしょうか?新たな主たる事務所が供託した法務局から離れてしまってもよいのでしょうか?

このような場合、供託金は新たな主たる事務所の最寄りの法務局へ移転されなければなりません。これを保管替えといいます。

今回は、営業保証金の保管替え制度について解説していきたいと思います。

営業保証金は常に主たる営業所の最寄りで供託されていなければならない!

まず前提として、営業保証金は常に主たる営業所の最寄りの供託所に供託されている必要があることを覚えておいてください。

宅建業法25条1項

宅地建物取引業者は、営業保証金を主たる事務所のもよりの供託所に供託しなければならない。

よって、主たる事務所が移転された場合、これに伴って供託所も変更される必要があるということになります。

このとき、供託所の間で供託金を移転するよう請求する手続きのことを保管替えといいます。

宅建業法29条(抜粋)

宅地建物取引業者は、その主たる事務所を移転したためその最寄りの供託所が変更した場合において、金銭のみをもって営業保証金を供託しているときは、遅滞なく、費用を予納して、営業保証金を供託している供託所に対し、移転後の主たる事務所の最寄りの供託所への営業保証金の保管替えを請求し、その他のときは、遅滞なく、営業保証金を移転後の主たる事務所の最寄りの供託所に新たに供託しなければならない。

注意!保管替えができるのは供託金が現金の場合のみ!?

復習になりますが、供託金の支払い方は現金のみにかぎられておらず、有価証券によって納めることもできるようになっています。つまり、供託金の支払いには次の3パターンあるということです。

供託金3パターン。
  • 現金のみ
  • 現金と有価証券
  • 有価証券のみ

このうち、保管替えが可能なのは、供託金が現金のみの場合(有価証券が含まれていない)だけとなりますので注意が必要です。

有価証券が含まれている場合はどうなる?

供託金の中に有価証券が含まれている場合は保管替えをすることができません。

この場合は、まず移転後の主たる事務所の最寄りの供託所へ供託をし、その後に従前の供託所へ営業保証金の取戻しを請求することになります。

このときの供託金の額は新規に営業を開始するときと同じになります。つまり、一時的に供託金が2倍必要になるということです。

まとめ

いかがでしょうか?

営業保証金の保管替えとは、現金のみで営業保証金を供託している宅建業者が主たる営業所を移転した場合において、従前に供託していた供託所へ請求して供託金の供託先を移転することです。

営業保証金に有価証券が含まれいている場合は、保管替えをすることができず、一時的に重複する形で移転先の最寄りの供託所へ供託をしたうえで、従前の供託所へ営業保証金の取戻しをする必要があります。(一時的に2倍の営業保証金が必要ということ。)

営業保証金は、営業所が1か所だけでも1,000万円必要となります。もし有価証券が含まれていると一時的といえども2,000万円が必要になるということになります。

ですので、新規で宅建業をはじめる際に営業保証金の供託を選択する場合は、できるだけ現金のみで供託した方がよいかもしれません。